マウス椎間板におけるmTORのオートファジーの誘導実験を進めたものの、LC3の発現を確認できず、実験が予定通り進まなかった。 期間内に結果が出ないと判断し、方針を転換し、凝固・線溶系が骨折修復に影響に関する実験を行った。In vitroにおいてマウス骨芽細胞様細胞株(MC3T3)とマウスマクロファージ様細胞株(RAW264)を使用し、トロンビンの骨芽細胞への影響をみた。In vivoではC57BL/6、8週齢、雄マウス使用し骨折マウスモデルを作成し、骨芽細胞・破骨細胞の集積と関連タンパクの発現を免疫染色によって評価した。 まず、MC3T3細胞のPAR-1受容体の発現をWB法で確認した。これをトロンビン刺激することより細胞内Ca濃度が増加したが、PAR-1受容体阻害薬であるSCH79797によりこの反応は抑制された。トロンビン刺激によってMC3T3細胞よりのMCP-1、組織因子(TF)の発現量がRNAレベル、タンパクレベルともに増強されていた。発現されたMCP-1は上清中に放出されRAW細胞の遊走を促すことをELISA法とmigration assayにて確かめた。これらの反応は、LY294002(PI3阻害薬)、PD98059(MAPK阻害薬)およびSCH79797により抑制された。マウス大腿骨骨折部および仮骨部において正常骨髄にはみられないようなトロンビンの発現がみられ、同部位にMCP-1、TFの発現をみた。 これによりトロンビン刺激がPAR-1受容体を介し、マウス骨芽細胞様細胞株における外因性経路を活性化し、最終的にトロンビンを生成することができる機能的なTFを発現することが確認できた。
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