研究課題/領域番号 |
25861306
|
研究種目 |
若手研究(B)
|
研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
三島 健一 名古屋大学, 医学(系)研究科(研究院), 寄附講座助教 (40646519)
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
|
キーワード | ランソプラゾール / 骨形成促進 / ALP活性 / 最終骨分化 / 人工骨 / 細胞治療 / 安全性評価 / Runx2 |
研究概要 |
1. ランソプラゾールを加えた培養条件の最適化 ヒトMSCを用いランソプラゾールの添加濃度やタイミング、水溶性の有無による骨形成マーカーの変動を調べた。骨形成促進能は水溶性ランソプラゾールの方が優れていた。40 µMではALP活性は逆に低下し20 µM付近が最適濃度であった。未分化な状態では短期間の刺激の方がALP活性は上昇した。一方で骨分化が進んだ状態では刺激によって最終骨分化は抑制された。 2. 細胞治療の安全性評価 MSCを用いた細胞治療の安全性を検証するため、移植した細胞の生体内における空間的時間的分布を調べた。全身の細胞にGFPを発現したグリーンラットの骨髄由来MSCを骨誘導培地で3週間継代培養し骨芽細胞様細胞にした。この細胞をアテロコラーゲンの担体に含浸、野生型ラットの大腿骨に作製した骨欠損部に移植しグリーンラット由来細胞の分布を検討した。同様の検討は細胞の静脈内注入による全身投与でも行った。局所投与ではGFP陽性細胞は局所に留まり主要臓器への移行は確認できなかった。全身投与では注入後2時間では肺を筆頭に肝、脾、末梢血、骨髄にGFP陽性細胞を検出したが、2日目以降はすべての部位で検出されなかった。 3. ランソプラゾール担持人工骨の開発とin vivoでの有用性の確認 1週間近くランソプラゾールが徐放される人工骨を開発した。続いてラット大腿骨骨折モデルを作製、骨切り部近傍にこの人工骨を移植し、6週後の移植骨周囲および内部の新生骨を肉眼的、放射線学的(単純レントゲンとµ-CT)、組織学的(HE染色)に検討した。実験群は対象群と比較して、肉眼的にはより強固に人工骨と母床骨が癒合し、放射線学的には人工骨周囲により多くの新生骨が形成されていた。組織学的には人工骨周囲を取り囲み、一部は辺縁から内部に侵入するように形成された新生骨を確認した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ランソプラゾールのオフラベル効果である骨形成促進作用の臨床応用に向け、当初ボトルネックと考えていたランソプラゾール担持人工骨の開発に概ね成功したため、順調に研究は進展していると考えている。この人工骨はランソプラゾールが徐放されるように設計、作製されており、in vitroでは1週間近くランソプラゾールの局所濃度は最適化される。この人工骨の完成を受け、次の段階として中型動物での効果の検証に進むことが可能となった。
|
今後の研究の推進方策 |
ウサギ脛骨近位に部分骨欠損モデルを作製、欠損部の形状に適合したランソプラゾール担持人工骨を移植し、経時的にサンプルを回収する。得られたサンプルは組織学的、放射線学的に人工骨周囲や内部の新生骨形成の状況をコントロール群と比較して検討することを予定している。
|
次年度の研究費の使用計画 |
1.ランソプラゾールを加えた培養条件の最適化と2.細胞治療の安全性評価に使用する消耗品が当初の予算よりも安価に購入できたことに加えて、3.ランソプラゾール担持人工骨の開発とin-vivoでの有用性の確認において、新規人工骨の開発に別施設の協力が得られたため未使用額が生じた。 次年度はウサギを用いた動物実験を計画しており、次年度使用額を動物購入および飼育費用に充当する計画である。
|