研究課題
関節リウマチにおける治療の戦略は生物学的製剤の登場により劇的に変化した。その中で最も注目するべき点は関節破壊の抑制である。これまで抑止しきれなかった関節破壊の進行は容易にレントゲン画像により確認が可能であったが、現在の治療下においてはその検出が困難となっている。Sharp scoreを代表とするレントゲン画像の評価方法を用いればその変化を検出は可能であるが、読影技術の習得の問題と読影者間の差が問題となり、さらに読影に要する時間が日常診療において確保が困難である。この問題を解決する方法としてより定量的且つ省労力であるコンピューターによる自動解析システムの開発をすすめ、骨びらんと関節裂隙の狭小化とに大別される関節リウマチの骨破壊について関節裂隙の狭小化の計測を超解像画像に変換し開発したアルゴリズムを用いて計測する方法を確立させた。研究の成果は発明の名称:「骨間距離測定装置、骨間距離測定方法、コンピュータを骨間距離測定装置として機能させるためのプログラム及び該プログラムを記憶した記録媒体」として特許出願した[出願番号:特願2015-022533]。また、映像情報メディア学会年次大会、映像メディア処理シンポジウム、コンシューマエレクトロニクス研究会でその成果を発表した。また実際の関節リウマチ患者の関節画像を利用して検者間信頼性などの妥当性の検証や複数回の計測を行い測定精度の確認を現在行っている。
2: おおむね順調に進展している
半自動的に行われる定量的レントゲン画像の読影システムの構築に関してはTotal Variation正則化手法とShock Filterを用いた超解像手法によりより精度の高い状況で関節裂隙間の距離の測定を行える環境が整備された。この一年間で処理条件の変更を行い、骨輪郭をより明瞭に描出できる様に改良を加えた。関節裂隙間距離の測定は関節表面を人的に数点選択することでカーブフィッティング法を利用する点において大きな変更はなく。法線法と面積法のよる二つの測定方法を用いて実際の計測が進行中であり両者の測定法における観察者内変動や観察者間変動について半自動的システムであることも含め、検証を現在行っている。また現時点では人的操作で行われている行程を自動化できる余地があり、さらなる省力化・測定の短時間化を図っていく。前述の如く関節表面の認識に関しては任意の点を人的に選択する必要があり、画像情報の認識手法についての改善点を模索し、さらなる自動化、それによる観察者内変動や観察者間変動の減少を目指していく。画像情報の認識手法の向上は骨びらんの識別にも応用が期待され、予定通り今年度より骨びらんの測定に関しても研究を進めていく予定である。
Total Variation正則化手法とShock Filterを用いた超解像画像を用いた関節裂隙間距離測定システムを用いて、実際の関節リウマチ患者の手指レントゲン画像のMCP関節の測定を行いて当施設を中心に形成されるTBCR(Tsurumai biologics communication registry)という生物学的製剤を使用している関節リウマチ患者約3000名の多施設データベースの臨床データとレントゲン画像の情報を連結して関節リウマチの疾患活動性の程度と関節破壊の進行速度についての相関について従来の画像評価方法との対比を行いその有効性の検証を進める。現時点ではMCP関節のみを対象としているが、昨年末より近位指節間(PIP)関節の計測アルゴリズムの開発に着手し計測とその妥当性を検証中である。今後更に他の関節への応用を進めていく予定である。現時点では半自動的計測方法としながらも人的操作が多く煩雑な行程が残っており、省力化という点において改善の余地があり、プログラミングの修正を行い省力化を現在図っている。またもうひとつの関節破壊の形態である骨びらんについては画像認識の方法以前に、3次元的に広がる骨侵食を投影像であるレントゲン画像で評価をする複雑さと、どこまでを骨びらんとするか既存の目視による判断も困難であるという問題点があり、画像認識の手法の継続的な改善と併せて基準の策定とその妥当性の検証も進めていきたい。
研究に利用するために購入した3Dプリンタのフィラメントのうち、一部の色が期日に間に合わなかったので次年度に持ち越しとなった。
立体化し、鮮明な色彩で3D化した見本により、より詳細な研究を行う。
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