本研究では独自に開発したCMC-PEゲルに薬剤を結合し,Drug Delivery Systemとして使用することで神経組織の修復を促進しつつ神経障害性疼痛の発生を抑制できる新規治療材料を開発することを目的にしている。内径1.3mm,長さ1cmのシリコンチューブをラットの右坐骨神経に巻きつけ、3か月後にシリコンチューブの除去を行い、CMC-PEゲルを使用しないControl群、使用するゲル群とした。シリコンチューブ除去後1、2及び3か月時点での、CMC-PEゲルの効果を検証した。 CMC-PEゲルの神経機能回復効果を評価するため、除圧後1、2及び3か月後の右坐骨神経を用いて、運動神経伝導速度検査、引っ張り強度試験及び筋湿重量(前脛骨筋)検査を実施した。除圧後、運動神経伝導速度検査、前脛骨筋筋湿重量、また、組織学的解析及び引っ張り強度試験でゲル群はCONTROL群に比べ有意に神経機能の回復を示していた。絞扼神経部位からRNA抽出をし、リアルタイムPCRを用い遺伝子発現の変化を調査した。TNF-α、IL-6、IL-1βを測定した。1か月時点では2群間の比較において、IL-6のみと有意差を認めていた。またIL-1βも統計学的有意差は無いが発現量は低下傾向であった。 新規に開発したゲルは神経保護、炎症性サイトカインの発現を抑制していることが示唆され、新たなDrug Delivery Systemとしての有用な材料となりうることが示された。
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