研究実績の概要 |
末梢神経損傷後の機能回復は未だ十分とは言えず、末梢神経再生における軸索慎重の誘導は重要な研究課題である。骨代謝関連因子(Bone Morphogenetic Priteins:BMPs)は骨誘導能を有するのみでなく中枢神経系の発生における必須の調節因子で、中枢神経損傷後の再発現、神経保護作用が知られているが、末梢神経系におけるBMPsの作用に関する報告は少ない。骨と神経は末梢神経損傷時の異所性骨化など関連性は深く、さらにPTHレセプターが末梢神経系にも発現している事実に着目し、PTH(1-34)が末梢神経系にも効果を及ぼすと仮設した。そこでラット坐骨神経軸索断裂モデルを用いて末梢神経再生の過程におけるBMP7/Smadシグナルの発現変化と局在、PTH(1-34)投与による影響、およびin vitroではSchwann cellに対するBMP7,PTH(1-34)の作用を検討した。結果、末梢神経損傷後早期の脱分化したShwwann cellにおけるBMP-7/Smadシグナルの活性化を認め、in vitroでBMP7のSchwann cellに対する細胞増殖能の増強作用が確認された。一方でBMP7/Smadシグナルの活性化より遅れてantagonistであるNOGGINの発現増大を認めたことより、軸索伸長後にはBMP/Smadシグナルの抑制も重要な過程であると考えられた。また同モデルに対するPTH(1-34)投与により、電気生理学的に末梢神経損傷後の優位なMCVの改善を認め, in vitroでPTH(1-34)投与によりSchwann細胞におけるBMP7の発現増大が確認された。本研究の結果からBMP7、PTH(1-34)が骨代謝の分野だけでなく、末梢神経再生においてもSchwann cellを介し作用することが確認された。
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