関節軟骨の機能を保持するためには、コラーゲンの生理的架橋(クロスリンク)によるコラーゲンネットワークの構築と維持が重要である。関節軟骨の機能は主にグリコサミノグリカン(GAG)とtypeⅡコラーゲンにより維持されていることは広く認識されている。加齢ととともにこれらの含有量は減少し、軟骨の力学的強度やマトリックスプロテアーゼ(MMP)に対する抵抗性が低下し、徐々に軟骨変性が進行する。クロスリンクの形成量を規定する酵素はリジルオキシダーゼ(LOX)である。変形性関節症の進行過程においてLOXおよびクロスリンク量がどのように変化し、軟骨の力学的性質とどのように関連するかについては不明である。さらに関節軟骨へのLOXの付加がクロスリンクを増加させ得るならば、変形性関節症の進行を抑制する有効な手段になる可能性がある。 関節軟骨内のコラーゲンクロスリンク量と変性軟骨との関連を調査した。日本白色家兎の変形性膝関節症モデルから取り出した関節軟骨を試料として、コラーゲン分子ごとのクロスリンク量を検討した。術後週数の進行とともに、軟骨の組織学的変性が進行しGAGの含有量が低下するものの、コラーゲン分子ごとのクロスリンク量に有意な変化を認めなかった。力学的評価では、変性軟骨で粘弾性が低下する傾向にあったものの、コラーゲン分子ごとのクロスリンク量との間に有意な関係を認めなかった。変性軟骨のより詳細な解析を行うために質量分析による二糖解析を試みており、クロスリンク量との関連についても明らかにする必要があるかもしれない。
|