研究実績の概要 |
概要 放射線誘発性末梢神経障害は神経の部分障害により生じるものと考えられているが,その機序は解明されておらず,治療に苦渋することが多い.本研究では,難治性である放射線誘発性末梢神経障害の動物モデルを確立し,作製された動物モデルを用いて,その発症機序の解明や治療法の開発を行うことを目的とする.平成26年度はラット坐骨神経を用いて放射線誘発性末梢神経障害の動物モデルの作製を行った.先行実験で得られたデータを基に,本動物モデルでのX線照射量は90Gyとした.本研究では周囲軟部組織を鉛で覆いX線をラット坐骨神経のみへ照射した群と手術手技のみを行ったsham群の2群を作製し,放射線の神経への直接的な作用を検証した.機能評価として照射後4, 8, 12, 16, 20, 24週で SFI(Sciatic Functional Index)を計測したが,2群間に有意差は生じなかった.24週で行った電気生理学検査ではX線照射群はsham群と比べ有意に振幅の低下を認め,伝導障害が生じていることが示された.また,24週で行った組織学的検査でも,X線照射群で有意に軸索変性所見を認めた.これらの結果より,90GyのX線をラット坐骨神経に照射後24週で部分神経障害モデルを確立できることが示された.平成27年度には26年度に作製した動物モデルを用いて,部分末梢神経障害に対する端側縫合法を用いた神経移植の有用性について検討した.しかし,放射線神経障害モデルの作製に6か月を有する上,端側縫合による神経移植後3か月,6か月での評価を行ったため結果を得るのに長期間を必要とした.また,端側縫合法による神経移植が技術的に困難なこともあり,本法の有用性を評価するに値する実験群を作製できなかった.以上より,放射線誘発性末梢神経障害に対する端側縫合法による神経移植の有用性については検討できなかった.
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