破骨細胞は、骨芽細胞が発現するRANKLの刺激を受けることで単球/マクロファージから分化する。破骨細胞が分化成熟する際のシグナルクロストークの詳細は近年明らかにされつつあるものの、破骨細胞の分化制御機構の全容については未だ解明に至っていない。 LumanはOASISファミリーに属するII型の1回膜貫通型の転写因子である。OASISファミリータンパク質は通常状態では小胞体膜上に局在し、小胞体内腔におけるタンパク質の折りたたみが正常に行われているかをモニターするセンサーとして機能する。 前年度までにLumanが破骨細胞分化過程で発現上昇し、かつ分子内切断を受け、転写因子として機能するN末断片が産生されることを見出した。さらに、Lumanが破骨細胞分化時に破骨細胞融合因子DC-STAMPの発現を誘導することを見つけた。Lumanをノックダウンすると、破骨細胞同士の融合による多核化が阻害されることも分かった。免疫沈降実験から、LumanとDC-STAMPの両者が結合することも見出した。今年度は、LumanとDC-STAMPによる破骨細胞分化の制御を明らかにするためにLumanおよびDC-STAMPの細胞内局在を調べたところ、単独で発現させた場合はどちらもそれぞれ小胞体に局在するが、両者を同時に過剰発現させるとLumanとDC-STAMPは小胞体だけでなくゴルジ体にも局在することが分かった。Lumanと結合できない変異DC-STAMPタンパク質を共発現させると、DC-STAMPはプロテアソームによる分解を受け、発現量が極端に減少した。これらの結果より、Lumanは、DC-STAMPの発現を調節しながら、かつDC-STAMPと複合体を形成し、細胞内の局在とタンパク質安定性を制御することで破骨細胞の分化・成熟を調節している可能性が示唆された。
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