離断性骨軟骨炎は発育期のスポーツ選手、特に野球選手に多くみられる障害であるにも関わらず、いまだ診断・治療に難渋することが多い。病院を受診した時点では手術適応となる症例が多いため、これまでの研究では手術方法について主眼が置かれていた。しかし、病因、病態が十分解明されないことには治療成績にも限界があることから、本研究では離断性骨軟骨炎の要因について検討を行った。 まず内的要因として上腕骨小頭への血流が挙げられる。昨年度までの研究で、新鮮屍体解剖より、小頭へ流入する血管は必ず存在するものの、その太さ、走行には個人差が大きいことが確認された。さらに研究を進めたところ、上腕反回動脈から流入する血管は必ず1本存在しているが、近位側からの栄養血管は今回の実験方法では確認できない屍体肘が半数以上に及んだ。障害の発生する発育期の肘ではないため、成人となれば血管そのものが退縮してしまうのか、あるいはmicrofilを用いた実験方法の限界なのか、今後の検討が必要である。 次に外的要因として投球動作中に肘にかかるストレスを検討するため、投球動作解析を行った。健常選手の肩、肘関節の角度、体幹、骨盤の回旋角度、手の速度について検討を行ったが、小学生期は投球フォームにかなりばらつきがみられ、一定の傾向は認められなかった。 さらに研究期間の2年間で連続して検診での超音波検査を行うことができた784名の経時変化を検討した。784名中756名は初年度に明らかな異常なしと判断したが、翌年の検診ではそのうちの20名 (1.3%)に障害が発生していることが確認された。 以上より、肘離断性骨軟骨炎の発生要因を明らかにするまでは至らなかったものの、発生率や栄養血管の存在は確認することができ、今後は研究方法も含めて更なる検討が必要と考えられる。
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