研究課題/領域番号 |
25861335
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 京都府立医科大学 |
研究代表者 |
南 陽一 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (40415310)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 体内時計 / 大腿骨 / 同調 / 軟骨 |
研究概要 |
大腿骨の体内時計について詳細を検討した。時計遺伝子の1つであるPeriod2遺伝子のカルボキシル末端にホタルルシフェラーゼ遺伝子を挿入したレポーター遺伝子(PER2::Luc)をもつマウスを用い、大腿骨に存する時計を可視化した。大腿骨を採取して組織培養下で発光を観察したところ、明瞭な約1日周期のリズム(概日リズム)が観られた。大腿骨全長を視野に含めることが可能なイメージングシステムを用いて観察し、成長板、大転子、小転子、大腿骨頭に著明な概日リズムを示すシグナルを認めた。これらの部位に成長軟骨が存在することから、体内時計が成長軟骨に内在すると考えられた。顆間窩にもシグナルが認められ、関節軟骨に体内時計が内在することが示唆された。 大腿骨体内時計の同調機構を解明するために、化合物投与による位相変位(体内時計の刻む時刻の変化)を検討した。フォルスコリンの投与により、大腿骨の体内時計は位相変位した。位相変位量は投与時刻依存的であり、PER2::Luc活性のピークより前では位相前進が、ピークより後では位相後退が観察された。また、合成グルココルチコイドであるデキサメタゾンを投与したところ、フォルスコリンと同様に大腿骨の体内時計の位相変位が 観察された。デキサメタゾンの影響もまた投与時刻依存的であった。フォルスコリンによる作用が観られたことから、例えばGタンパク質結合型受容体を介して細胞内のcAMPレベルを上昇させるペプチドが体内時計の同調因子として機能することが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
以下に述べる通り、組織培養系を用いた大腿骨の体内時計についての研究が進展し、同調機構についてその一端を明らかにすることができた。また、長期培養に伴う、予想外の結果を観察することができた。このことから、研究はおおむね順調に進展していると考える。 具体的には、世界で初めて大腿骨の全体を視野にいれ発光を観察できる系を用い、軟骨部に強いシグナルが局在することを示した。培養下の大腿骨の体内時計に同調能が存在することを明らかにし、cAMP系を介した同調機構および、グルココルチコイドによる大腿骨の体内時計の同調機構の存在を示唆する結果を得た。さらに、今後の重要な基礎データとなるであろう、投与時刻依存性に関する詳細な解析を行った。 予期していなかった結果として、培養開始直後と比較し、長期培養後の大腿骨に長さの変化が生じていることを観察した。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の推進方策は次のとおりである。体内時計の同調機構について、引き続き、組織培養系を用いた解析を実施する。その一つとしてPTHに着目した解析を進めたい。例えば、PTHの体内時計への作用について、投与時刻依存性や濃度依存性について検討する。提案時点では細胞培養系を用いた解析も同時に行う予定であったが、研究を着実に進展させるため、組織培養系を用いた解析に注力する考えである。 また、長期培養による大腿骨の変化について、詳細を検討する。PLoS ONE誌に報告した組織培養の方法を用い、幼若マウスの大腿骨を長期に維持し、大腿骨のサイズの変化を追跡する。この際、体内時計の状態をモニターできるよう工夫し、大腿骨のサイズの変化が、正常な組織の生理機能の1つである体内時計を維持したままなされるのかどうか、確認する。
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