本研究では関節軟骨の外傷および疾患時に生成されるコラーゲン分解物が、関節破壊を知らせる伝達物質として軟骨細胞に認識され、遺伝子発現を介して細胞外環境を再構築する可能性を検討した。 申請者はコラーゲン分解物の一つであるプロリル‐ヒドロキシプロリン(PO)が軟骨細胞の遺伝子発現を介してアグリカン産生を増加させる生理活性ペプチドであることを見出した。POの軟骨細胞における標的遺伝子を培養軟骨細胞株であるATDC5を用いてDNAマイクロアレイ法で解析した。その結果、POおよびコラーゲン加水分解物の混合物は、変形性関節症時に発現が増加することが報告されているprotein kinase C zeta (PKC zeta)のmRNA発現レベルを抑制することを見出した。本研究の結果、コラーゲン加水分解物またはジペプチドであるPOはPKC zetaのmRNA発現増加を抑制することで、変形性関節症の予防に寄与する可能性があることが示唆された。
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