研究課題
本研究計画では、圧迫性脊髄症急性増悪期患者における髄液中各種蛋白の発現量を定量するために、研究材料として患者の髄液の採取が必要となる。圧迫性脊髄症患者においては、通常手術の適応となるため、手術前に脊髄造影検査が必須となる。その際、髄液採取、髄液検査は必ず施行するため、その一部を研究材料として使用する。採取した髄液については、直近の1ヵ月に日本整形外科学会頚髄症判定基準 (JOA Score) にて2点以上の悪化を認めた脊髄症急性増悪群、慢性脊髄症群、対照群として腰部脊柱管狭窄症に対して脊髄造影検査で髄液採取を行った症例、の3群に分け、平成26年度も入院、脊髄造影検査の際に髄液採取を行った。採取した検体に対して、軸索のneurofilament損傷を反映するphosphorylated neurofilament subunit NF-H (pNF-H)、軸索の微小管を構成するTau、アストロサイトの損傷を反映するS100βにつき、ELISA法にて蛋白の定量化を行った。結果として、圧迫性脊髄症急性増悪期においてはpNF-Hの発現が優位に上昇した一方で、Tau、S100βの発現は上昇せず、圧迫性脊髄症急性増悪期には軸索障害が優位に起こっている可能性が示唆された。また、手術による臨床成績を検討した所、急性増悪群では慢性脊髄症悪化群と比べて術前のJOA score改善率は優位に高く、pNF-Hの発現量と相関を認め、pNF-Hが圧迫性脊髄症急性増悪期を示唆するバイオマーカーとなりうる可能性が示唆された。
2: おおむね順調に進展している
圧迫性脊髄症急性増悪期において著明に上昇する蛋白の存在が確認でき、また各種神経系の障害を反映する蛋白と比較検討することで、いまだ詳細な病態が不明な圧迫性脊髄症急性増悪期における病態の一部が解明されつつある。
プロテオミクス解析は行っていないが、圧迫性脊髄症増悪期に上昇する蛋白の存在が確認され、病態の一部が解明された。今後は、追加してオリゴデンドロサイト、ニューロンの障害マーカーについて蛋白の定量化を行っていく予定である。また、pNF-Hの上昇が予想を超えて顕著であったため、血清中のpNF-Hの発現についても検討ができればと考えている。
試薬の購入に際し、予想より金額を抑えることができたため、予算の使用を抑えることができた。また、消耗品の使用も予定より抑えることができたため、予算の使用を抑えることができた。
他のバイオマーカー候補となる蛋白につき、引き続きELISA試薬を購入し、研究を継続する。
すべて 2015 2014 その他
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 謝辞記載あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (12件) 備考 (1件)
Journal of Clinical Neuroscience
巻: 21 ページ: 2175-8
Arthritis Research Theraphy
巻: 16 ページ: R159
http://www.lab.toho-u.ac.jp/med/sakura/orthopedics/research/achievement/index.html