研究課題/領域番号 |
25861347
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 近畿大学 |
研究代表者 |
矢野 昌人 近畿大学, 医学部, 助教 (30500821)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 破骨細胞分化 / 筋芽細胞 / 異所性骨化 / 進行性骨化性線維異形成症 |
研究概要 |
筋組織が骨・軟骨再生に支持的に働く知見が集積されてきたが、その機序の詳細は不明である。本研究課題では筋組織が骨・軟骨再生を誘導する機序と骨吸収系細胞の破骨細胞やマクロファージなどの周辺の細胞が果たす役割を明らかにし、筋組織の骨・軟骨再生誘導に重要な因子を同定することを目的とした。本年度はまず、マウス筋芽細胞とBMP-2をコラーゲンスポンジと共に免疫不全マウスの皮下および筋組織内に移植し、異所性骨化と破骨細胞形成について検討した。その結果、筋組織内移植において皮下よりも有意に異所性骨化および骨芽細胞の増加が見られた。さらに、皮下組織と比較し、筋組織で誘導した異所性骨において破骨細胞の増加が見られた。そこで破骨細胞形成における筋組織の作用を明らかにするために、破骨細胞分化因子RANKLをもちいたマウス単球・マクロファージ系細胞の破骨細胞分化誘導系において、筋芽細胞または皮膚線維芽細胞の培養上清添加をおこなった。その結果、線維芽細胞と比較して、筋芽細胞の培養上清は有意に破骨細胞形成を促進した。以上より、筋組織から破骨細胞形成を促進する液性因子が産生されていることが示唆された。さらに、筋に骨化をきたす進行性骨化性線維異形成症(FOP)を手がかりに、FOPの原因変異である、恒常活性型BMP受容体[ALK2 (R206H)]を発現させた筋芽細胞をもちいて、筋による破骨細胞分化促進機序を検討した。マウス単球・マクロファージ系細胞の破骨細胞分化誘導系へのALK2 (R206H)発現筋芽細胞の共培養、さらにはALK2 (R206H)発現筋芽細胞の培養上清の添加により、破骨細胞分化が促進することが明らかとなった。そこで、筋芽細胞にALK2 (R206H)導入することで発現が誘導される破骨細胞誘導因子を同定するために、DNAマイクロアレイをもちいていくつかの候補因子を抽出し、解析中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度はマウス筋組織内および皮下組織における異所性骨化モデルをもちいて、筋内において異所性骨化および破骨細胞形成が有意に亢進することを明らかにした。また、培養細胞をもちいた実験においても、筋による破骨細胞形成促進を支持する結果が得られた。現在、筋から産生される破骨細胞形成促進因子を同定するために、筋に骨化をきたす進行性骨化性線維異形成症(FOP)を手がかりとして、筋芽細胞にFOPの原因変異ALK2 (R206H)を導入することで発現が誘導される破骨細胞形成促進因子をDNAマイクロアレイ解析のデータから抽出済みで、詳細な検討をおこなっている。本年度の研究成果の一部は第32回日本骨代謝学会学術集会などにおいても成果の発表予定である。これらのことを総合的に判断して、おおむね順調に進展しているとした。
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今後の研究の推進方策 |
本年度の検討により抽出された、筋芽細胞から産生される破骨細胞形成を促進する候補因子の関与を明らかにし、その破骨細胞形成促進機序を検討する。また、筋による骨化促進作用における破骨細胞の役割を明らかにするために、筋組織における異所性骨化モデルにおいて骨吸収抑制剤等の投与実験をおこなう。こられの実験結果に基づき、破骨細胞を標的としたFOP治療法についてもマウスをもちいて検討する。来年度は本研究課題の最終年度であるため、すべての実験を12月までに終了し、それ以降は研究のまとめや成果発表を行う予定である
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