研究課題/領域番号 |
25861353
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研究機関 | 弘前大学 |
研究代表者 |
丹羽 英智 弘前大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (20374845)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | ケタミン / 抗腫瘍作用 / 腫瘍増殖抑制 / 脳悪性腫瘍 |
研究実績の概要 |
フローサイトメトリーの使用が困難になったため、計画を変更し、ケタミンの直接的、抗癌作用の証明を行った。これは以前、本研究室で行っていた研究を継続したものであり、新たな測定器具を要さずに、また、癌切除手術に貢献する麻酔法を探求するという本来の目的にも合致するものである。ラットの悪性脳腫瘍細胞(グリオーマ細胞)の培養液に、0-100μMのケタミンを添加したのち、72時間培養する。72時間後の腫瘍細胞の数を測定したところ、ケタミンの濃度依存性に腫瘍細胞の増殖が抑制された。培養後の腫瘍細胞をTUNEL法で染色したところ、ケタミンにより、腫瘍細胞がアポトーシスを起こしていることが判明した(ここまでが以前までの研究である)。続いて、ケタミンにより誘導されたアポトーシスをさらに別な方法で証明するとともに、その機序を探るべく、アポトーシスを抑制する薬剤であるDIDSを実験系に添加し、アポトーシス細胞が減少するかを検討した。その結果、予想通り、ケタミンによるアポトーシス誘導はDIDSの濃度依存性に抑制された。DIDSは細胞のクロールチャンネルを阻害することで、アポトーシス誘発を止めることから、ケタミンによるアポトーシス誘導もクロールチャンネルが関与していると推察された。更に、ケタミンはNMDA受容体阻害作用を主体に、多様な機序により麻酔作用を発現している。今回、観察された抗腫瘍作用がNMDA受容体を介しているかを、検討した。選択的にNMDA受容体を阻害する薬物D-AP5を用いて同様の実験を行ったところ、ケタミンの抗腫瘍作用と同様の現象が見られた。このことから、ケタミンはNMDA受容体阻害を介して、最終的にはアポトーシスを誘発することが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
施設の問題からフローサイトメトリーの使用が難しくなり、当初の目的である、ナチュラルキラー細胞活性の測定が研究室でできなくなったため、26年度はケタミンの抗癌作用を別な側面(腫瘍細胞の増殖を抑える)で証明した。
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今後の研究の推進方策 |
ナチュラルキラー細胞傷害活性を、外注で行うことで、測定に関する問題は解決できると思われる。検体採取は採血のみであるため、研究の進行も遅れていることから、臨床試験を行い、実際に癌切除手術を受ける患者さまのNK細胞傷害活性を測定し、ケタミンがNK細胞活性に与える影響を測定する。上述した通り、患者さまに行う医療行為は採血だけであるので、観血的動脈圧測定(Aライン)を導入された患者さまを対象にすれば、痛みを新たに与えずに効率的に採血ができると思われ、倫理委員会の承認も確実に取れると思われる。
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次年度使用額が生じた理由 |
フローサイトメトリーが使用できなかった分、助成金に余りが生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
翌年度のNK細胞活性測定の外注に使用したい。
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