ロボット支援下前立腺全摘出術を施行された患者8人に対し、視覚誘発電位の測定をおこなった。 麻酔導入後、患者頭部に針電極を装着し、更に光刺激装置を有するゴーグルを装着した。測定のタイミングは、執刀開始前、頭低位開始後30分、60分、90分、120分、頭低位終了後5分、10分の7点とし、高度頭低位により視覚誘発電位がどのように変化するかを、執刀開始前の値と比較し、継時的に評価した。高度頭低位開始に伴い、ほとんどの測定点で視覚誘発電位の潜時延長がみられた。また、超音波を用いて視覚誘発電位同様に眼動脈血流の流速測定を試みた。しかし、眼動脈血流測定は、超音波プローベを当てる位置により、測定値に幅が生じてしまい、また、頭低位によりプローベ角度を毎回一定にして測定することが困難であった。結果としては同一動脈の流速を測定できているかどうかに疑問が生じ、さらに、測定には予想以上に時間を要し、患者の眼球への影響を心配する必要も生じた。よって眼動脈血流ではなく、視神経鞘の径を測定することにした。測定点は視覚誘発電位と同じとした。ほとんどの測定点において視神経鞘も頭低位開始時間とともに径の増大を認めた。視覚誘発電位、視神経鞘測定点では血圧、中心静脈圧、心拍出量(エドワーズライフサイエンス社 フロートラック使用)、中心静脈酸素飽和度(エドワーズライフサイエンス社 プリセップカテーテル使用)といった循環動態をモニタリングして記録した。 視覚誘発電位は頭低位開始後から経時的に潜時が延長する傾向を示したものの、統計的に有意差を認めるまでには至らなかった。また、視神経鞘の径も経時的に増加する傾向を示したものの、統計学的有意差が出るほどではなかった。まだ、循環動態のモニタリング値と視覚誘発電位、視神経鞘径との関連性を統計学的に評価をしていないため、今後考察する予定である。
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