α2受容体作動薬は脊髄後角のα2受容体に作用し、神経障害性疼痛を抑制するため、欧米では鎮痛薬として使用されている。申請者らのグループは、これまでに体内分解材料を用いて徐放化局所麻酔薬を作成してきたが、2010年頃よりシート状のクロニジン徐放薬を作成してきた。作成したクロニジン徐放薬の鎮痛効果や副作用についてラット神経障害性疼痛モデルを用いて検討した。それと並行し、臨床応用を念頭におき、より注入しやすい小型の粒子状徐放薬の開発も進めてきた。長期間の鎮痛を必要とする患者に対し、より少ない投与回数で、効果的で副作用の少ない鎮痛法を確立することを目指した。 しかし途中から薬剤作成が上手く進まなくなったため、計画の変更を余儀なくされた。 神経障害性疼痛における内因性鎮痛経路の回復機構に主眼をおき、神経障害性疼痛モデルラットに三環系抗うつ薬を投与し、内因性鎮痛経路が回復することを明らかとした。具体的には、神経障害性疼痛モデル作成から5週間経過した時点でアミトリプチリンを5日間連続で腹腔内投与し、作成から6週の時点でラット前肢にカプサイシンを投与して内因性鎮痛の評価方法であるnoxcious stimulus induced analgesia(NSIA)を調べた。神経障害から6週経過するとNSIAは減弱するが、アミトリプチリン投与によりNSIAの回復が見られた。また、アミトリプチリン投与群ではカプサイシン投与時に脊髄後角でのノルアドレナリンの放出も増加しており、脊髄後角でのノルアドレナリンの関与も明らかとなった。
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