これまでの研究でマウス小脳神経前駆細胞にはNotch ligandの一種であるNotch 1とNotch receptorの一種であるJagged 1が発現しており、その標的遺伝子はHES 5が主でHES 1はほとんど標的になっていない事がわかっている。Notchシグナルの神経系細胞共培養下での働きを調べる目的で、Notchシグナルを作用させることで、神経細胞やグリア細胞マーカー(Tuj1、NeuN、MAP2やGFAP、S100b)の分布や出現頻度を免疫蛍光染色により解析した。Notch細胞内ドメイン(Notch intraceller domain : NICD)遺伝子を導入したAdeno virusを神経系細胞に感染させ、NICDを過剰発現させて直接作用させる方法と、Jagged1やDelta like ligand4を発現したマウスfibroblastと神経系細胞を共培養させて細胞接触作用させる方法で行なった。GFAP発現量はNICD過剰発現の細胞でも、共培養での細胞でも発現し、その発現量が増加する事が確認できた。Notch signalを過剰発現する事で細胞の中期(3-4日間)の生存率に影響が出るため、生存率向上のための神経成長因子の同定が必要であると考え、EGFやBDNFにても同様の実験を行なったが生存率の向上は認められなかった。本年は低酸素暴露による生存率の向上を目指し、18%、15%での低酸素環境下での細胞生存率についてさらなる検討を行ったが上記低酸素環境における細胞生存率の向上は以前、認められなかった。また、幼若脳神経細胞に対する麻酔薬の影響を再検討し、総説として論文投稿するとともに、神経障害性疼痛治療の一方法である硬膜外カテーテルのトラブルへの対処方法について検討し、執筆した。
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