・目的:本研究においては、我々が作製した小胞体機能が障害された遺伝子変異マウスを用いて、吸入麻酔薬の神経細胞毒性の分子機序に小胞体機能がどのように関与しているのかを検討した。 ・25年度: 変異BiPノックインヘテロマウス同士を交配させ、妊娠18日目に妊娠マウスを、3%のセボフルランに4時間暴露する。対照妊娠マウスには40%酸素を暴露する。この間血圧、血流、酸素飽和度をモニターする。暴露後は空気中で飼育を続け、翌日出産となる。出生後の新生児マウスは麻酔後直ちに断頭し脳標本を採取、2分割し、一方は生化学的解析用に凍結保存した。もう一方は形態学的な観察用に、組織切片を作成した。 その結果、 胎児マウス脳の組織像の タネル染色では、変異Bipマウス、特にホモ変異マウスにおいて、 セボフルラン曝露によって細胞死が多く誘導される傾向がみられた。 また、ウエスタンブロット解析の結果でも、 セボフルラン曝露によって、ホモ変異マウスではCHOPの発現が増加したが、 ヘテロ変異マウスでは増加しなかった。 つまり、セボフルランの曝露で小胞体ストレスが生じるが、 ホモ変異マウスでは小胞体ストレス反応による代償ができず、 細胞死が誘導されたと考えられました。 ・26年度:前年と同様に、ヘテロ同士で交配させた妊娠変異BiPノックインマウスを妊娠18日目にセボフルレンに暴露する。生まれたヘテロ、野生型マウスを飼育し、経時的に下記の検討を行う。変異BiPノックインヘテロマウスは小胞体ストレスに感受性が高いと考えられ、生後2年程で徐々に運動障害が現れて来る。こうした過程が吸入麻酔薬の暴露によって加速される可能性がある。下記の高次神経機能の観察を経時的に行う。 認知機能:マウス用8方向放射状迷路を用いた試験によって空間認識の学習機能を評価した。生後半年まで観察を行ったが、遺伝子型による差異は認めていない。
|