セボフルランを含む麻酔薬の投与により、発達段階の中枢神経細胞で、アポトーシスを起こすなどの毒性があることが明らかとなっているが、予防・治療法はわかっていない。一方、間葉系幹細胞の投与が、中枢神経系に対して、組織の再生を促す効果があることが示されてきており、麻酔薬の毒性に対しても治療的な効果があるのではないかと期待される。本研究では、培養細胞系ならびに新生仔ラットを用いた実験モデルにより、骨髄由来の間葉系幹細胞が、セボフルランの持つ幼若神経細胞への毒性に対して、予防的または治療的な効果があるかどうかを検討することを目的としている。 平成25年度の計画として、1.2.の2つを予定していた。 1.ラット胎仔神経細胞とラット骨髄間葉系幹細胞の共培養系を用いた検討:前段階としてより培養の簡単なマウスの褐色細胞腫株であるPC12細胞を用いた。PC12細胞の幼若期からの各成長段階に麻酔薬を曝露させ、神経毒の最もおこりやすい時期を同定した。分化4日目のPC12細胞に骨髄間葉系幹細胞の共培養を行ったところ、治療効果は認められなかった。また、骨髄系幹細胞の培養上清のみを用いた神経毒の治療効果についても認められなかったため、速やかに2の実験に移行した。 2. in vivo新生仔ラットモデルにおける骨髄間葉系幹細胞の予防・治療効果の検討:生後6日のラットを3%セボフルランに6時間曝露させるモデルを用いて、骨髄間葉系幹細胞の前投与により、神経細胞に起こるアポトーシスが予防できるかどうかを検討した。投与ルートとして皮下投与において、治療効果が認められなかった。引き続いて外頸静脈より投与方法を確立し、検討を行った。骨髄間葉系幹細胞前投与および培養上清前投与において、麻酔薬により引き起こされる炎症反応は抑えられたものの、神経毒治療効果は認められなかった。
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