セボフルランを含む麻酔薬の臨床使用濃度の投与により、成長発達段階の脳に広範なアポトーシスが認められ、成長後の学習障害が持続するということが明らかになっている。治療法はいくつか提示されているも、完全に明らかになっていない。 本研究の課題名である「幼若ラット脳へのセボフルランの毒性に対する間葉系幹細胞の予防・治療的効果の検討」は、平成25年度のうちに実験を遂行し、平成26年度には論文として掲載された。結果を簡単に述べると、骨髄由来間葉系幹細胞は幼若期麻酔薬による神経毒に関して、炎症反応は抑えるものの神経毒そのものは抑制できなかったというものであった。 その後、麻酔薬による神経毒を抑制できる薬剤の開発を進めたところ、NADPH-oxidase阻害薬であるアポシニンを一回投与することで、セボフルラン麻酔で引き起こされた神経アポトーシスを抑制し、ミトコンドリア障害を抑え、さらに成長後の学習低下まで回復できることを確認した。また、麻酔薬により成長後の学習障害が起こるメカニズムについて、学習行動実験直後に神経マーカーであるcfosの発現の違いに注目し、cfos陽性細胞の神経分布を解析した。麻酔曝露群において、脳扁桃体において非曝露群に比較してグルタミン作動性神経が減少していることをつきとめた。 以上の研究成果より、平成27年度国内の学会で1回、国外の学会で2回発表を行った。また、アポシニンの効果をBritish journal of anesthesiaにまとめ、受理された。cfosの発現についての論文は現在リバイズ中である。
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