研究課題/領域番号 |
25861363
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
古谷 健太 新潟大学, 医歯学系, 助教 (40535176)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 局所麻酔薬 / パッチクランプ / 脊髄後角 / 痛み |
研究概要 |
本研究の目的は、新たな局所麻酔薬として期待されているQX-314の脊髄における作用を明らかにすることである。 平成25年度は、主にラットの脊髄横断スライスを用いて、脊髄後角細胞からのブラインドホールセルパッチクランプ記録を行った。代表者は局所麻酔薬によるN-methyl-D-asparate(NMDA)受容体の抑制反応を過去に報告していたため、局所麻酔薬リドカインの誘導体であるQX-314がNMDA起因性反応を抑制するかどうかを調べた。結果、QX-314はNMDA灌流によって惹起される電流の振幅を抑制することがわかった。 引き続いて自発性興奮性シナプス後電流(sEPSC)に対するQX-314の反応を調べた。リドカインがsEPSCの頻度を増加させるのに対し、QX-314ははっきりとした反応が見られなかった。自発性抑制性シナプス後電流についても同様であった。 さらに神経根付き脊髄スライスを作成し、誘発性興奮性シナプス後電流(eEPSC)に対するQX-314およびQX-314+カプサイシンの作用を調べた。QX-314+カプサイシンはeEPSCを消失させたが、現時点で単純な電極と細胞とのシール悪化によるものである可能性を否定できない。QX-314単独でも、eEPSCの振幅を減少させるようであるが、同様の理由で結論は出すことができていない。 次に、くも膜下投与の際に起こる脊髄神経細胞の電気的な反応を見るため、in vivo標本からの細胞外記録を試みた。QX-314+カプサイシンを脊髄表面に灌流投与すると、受容野への侵害刺激による活動電位の発生頻度が減少した。その反応は、nociception specific neuronでより明らかであった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
脊髄横断スライスを用いた実験では、主要な部分の記録および解析を行うことができた。また、次年度予定していたin vivo標本からのパッチクランプ記録への前段階として、in vivo標本からの細胞外記録によるデータを取得することができた点は、想定以上の進展であった。 実験計画では、平成25年度中に神経障害性疼痛モデルラットからの記録を予定していたが、未達成である。その理由は、反応に乏しいと思われた正常ラットでも、ある程度の反応が得られたためである。すなわち、正常ラットで一通りの結果をまとめてからモデルラットでの実験を行う方針としたたためであるから、遅延ではない。
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今後の研究の推進方策 |
今後の方針として、3つの点を挙げる。 ①脊髄横断スライスから得られたデータの解釈:データ収集は行ってきたものの、一部のデータに関しては、詳細な解析に至っていない。例えば、誘発性興奮性シナプス後電流に関しては、薬理作用なのか、記録上の問題なのかを客観的には判断できていない状況である。これらを統合して、QX-314の脊髄スライスに対する作用を明らかにする。 ②in vivo標本からの記録:25年度に細胞外記録によって得られたデータを、in vivoパッチクランプ記録によって検証する。25年度中に行った実験よりも、技術的な困難が予想されるが、研究室内で同様の実験を行う研究者に助言と協力を仰ぐ予定である。 ③神経障害性疼痛モデルラットからの記録:正常ラットで得られたデータとモデルラットで得られたデータを比較する。モデルラットのほうがQX-314に対してより強い反応を示すことが想定される。 もし②が遅延した場合、③の実験に到達できない可能性もある。その場合、正常ラットでのデータをまとめるため、②を優先する方針である。
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次年度の研究費の使用計画 |
残金は実験に必要な手術器械や電極ホルダーなどを購入するには少なかった。それゆえ電極用の微細ガラス管などの消耗品を購入し残金をなくす予定であったが、年度末時点でストックが多く、保管場所もなかった。よって、次年度に繰り越して使用するほうが有益に活用できると判断し、その方針とした。 研究テーマであるQX-314という薬剤は、本研究においては高濃度で灌流投与するため、消耗が早い。当該年度末には残薬があったものの、数回の実験で使い切ると予想される。QX-314は比較的高額であるため、繰り越した52,980円は、主に翌年度のQX-314購入費用に充当する予定である。翌年度分として請求した助成金に比して、繰越金額は小さいため、合算して特別な器材などを買う予定はない。翌年度分の予算に関しては、応募した際の目的の通りに使用する。
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