全身麻酔からの覚醒時に筋弛緩薬の拮抗目的で抗コリンエステラーゼ阻害薬を投与することが多いが、副作用としてのムスカリン作用を阻害する目的で抗コリン薬のアトロピンがやむを得ず合併投与される。高齢者では脳内のコリン活性の低下を認めることが多く、アトロピン投与により覚醒遅延を惹起したり、術後意識障害、術後せん妄の一因であることが推測されている。これまでアトロピンが脳血管内皮機能に与える影響に関する報告がなく、これを申請者らが有するCranial Window法を用いて検討することを目的とする。 ①ラットにおけるCranial Windowを作成し、大腿静脈からアトロピンを投与し、経時的な脳血管径の変化を観察する。→投与後1時間、2時間、3時間、4時間まで観察したが、血管径はベースラインと比較して変化なし。ただし、投与直後5分までは脳血管の拡張が確認された。 ②アセチルコリン(NOドナー)を直接、硬膜を切開した脳表に局所投与し、血液脳関門の影響をできうるだけ除外した環境でかつ、全身の血管に影響を与えることなくアトロピン全身投与における脳血管内皮機能評価を行う。→いずれの観察時間でも、アセチルコリンの脳血管拡張作用は保たれた。 ③アトロピンは脳血管内皮を障害するのか、しないのか?それは一過性のものなのか?観察期間は240分として評価する。→アトロピンは一過性(超短時間)に脳血管内皮機能を障害するかもしれない。アトロピン投与群をドーズを変えて(0.03、0.1、0.3、1、3mg/kg)5群で比較検討することを計画していたが全ての群はまだ達成していない。果たしてそこまで群わけが必要なのか再検討が必要。
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