研究課題/領域番号 |
25861372
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 三重大学 |
研究代表者 |
田川 剛志 三重大学, 医学部附属病院, 助教 (00508517)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 麻酔薬 / 神経細胞死 / 新生児 |
研究概要 |
年間数億人近い人が、イソフルラン、セボフルラン、チオペンタール、プロポフォールなどの麻酔薬を用いた全身麻酔によって手術を受けているが、特に、小児に対する出術件数は年々増加している一方、麻酔薬の副作用による神経細胞死とそれに引き続く学習障害が問題となってきている。近年、動物実験により麻酔による発達段階の脳での広汎な神経細胞死とそれに引き続く行動障害が示されている。 現在の小児麻酔においては、吸入麻酔薬のセボフルランをベースにした麻酔が主流である。すなわち、セボフルラン単独か、これにチオペンタールかプロポフォールの併用が最も頻度の高い麻酔法である。これらの麻酔法のうち、生後7日目マウスにおいて、セボフルラン単独に比較して、チオペンタール併用では有意差はないが、プロポフォールを併用すると、海馬と脳梁膨大後部皮質において神経細胞死が有意に増加することをアポトーシスによる細胞死の指標であるcaspase-3を蛍光抗体法で検出することにより確認した。しかし、この神経細胞死が麻酔薬自体によるものか、麻酔薬による血行動態の破綻によるものか区別できなかった。そこで、ドップラー血流計を用いて脳血流量を測定することにより、これらの麻酔法では脳血流は減少しないことを確認し、神経細胞死は血行動態の破綻ではなく、麻酔薬自体によるものであることを証明した。 この結果、現在の通常の麻酔法では、新生児の脳において麻酔薬の副作用として神経細胞死が誘発される危険性を示し、さらに、セボフルランとプロポフォールの併用が最も危険な麻酔法であることを論文で発表することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
生後7日目のマウスの大脳皮質神経細胞内のCa2+濃度変化と細胞死の過程を多光子レーザー顕微鏡により可視化するには、神経細胞死が麻酔薬自体によるものであることが前提となる。このため、神経細胞死が麻酔薬自体によるものか、麻酔薬による血行動態の破綻によるものか区別する必要性が生じた。
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今後の研究の推進方策 |
生後7日目のマウスの大脳皮質神経細胞内のCa2+濃度変化と細胞死の過程を多光子レーザー顕微鏡によりリアルタイムに可視化するのと同時に、ドップラー血流計を用いて脳血流量をリアルタイムにモニターしていく。これにより多光子レーザー顕微鏡によって観察される事象が麻酔薬自体によるものであることを保証することができる。
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