研究課題/領域番号 |
25861374
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
高橋 亜矢子 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (70444544)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | GABAA受容体 / tonic電流 / 神経障害性疼痛 |
研究概要 |
本研究は、GABAA受容体介在性Tonic電流の生理学的意義の解明を目的とする。 ddyマウスの坐骨神経をPE20チューブで絞扼することにより、絞扼側の下肢の神経障害性疼痛を示す痛みモデルマウスの作成に成功した(坐骨神経カフモデル)。神経障害性疼痛の有無は、Hargreave test でカフ装着前の潜時が健肢で6.7±0.3秒、患肢で6.7±0.4秒と差がないのに対し、カフ装着3日目より患肢で4.9±0.3秒と有意に短くなり、熱刺激に対する疼痛閾値の低下が認められた。閾値の低下は術後15日目頃より回復傾向を示した。また、Von Frey testによる機械刺激の閾値も、カフ装着前では健肢9.4±0.6、患肢8.3±0.4と有意差がなかったが、カフ装着3日後では患肢で2.4±0.2と有意に閾値の低下が認められた。閾値の低下は熱刺激と異なり、術後15日以降も持続した。 このモデルマウスの脊髄スライスを用い、電気生理学実験パッチクランプ法で、脊髄後角膠様質細胞のGABAA受容体介在性tonic電流について検討した。Tonic電流は、そのアンプリチュードはコントロールマウス、モデルマウスで有意な変化はなかったが、tonic電流陽性の膠様質の数がモデルマウスでは有意に減少していることが明らかになった。 次にRT-PCR法で、マウスの患肢側脊髄後角におけるGABAA受容体サブユニットのmRNAの発言量の変化を検討した。これまでの様々な研究からtonic電流にはGABAA受容体サブユニットのうち、δ、α5、α4、α6が関与すると考えられるため、これらのmRNA の発現量を解析した結果、δサブユニットがカフモデルマウスの患肢側で有意に減少していることが明らかになった。 現在、免疫染色法、ウエスタンブロッティング法などで、タンパク質レベルにおける脊髄後角での変化を検討中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在、マウスの神経障害性疼痛モデルとして坐骨神経カフモデルを作成し、行動実験で痛みの閾値の低下を認め、疼痛モデルを確立することができた。また、この疼痛モデルマウスの脊髄で、GABAA受容体介在性tonic電流が減少していることが明らかになった。これらの結果は、本研究計画の最も重要な部分であり、この変化の詳しいメカニズムをさらに解析することで、本研究を予定通り遂行できると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
坐骨神経カフモデルマウスの脊髄で、GABAA受容体介在性tonic電流が減少していることが明らかになった。さらに詳細に検討するために、免疫組織学実験を行い、電気生理学実験で明らかになったtonic電流の減少と、分子生物学実験で明らかになった、GABAA受容体サブユニットの低下に関連性があるのかを明らかにすることが、今後の研究の第一目的となる。具体的には、脊髄スライスを作成し、GABAA受容体δサブユニットの発現が脊髄後角膠様質細胞で低下しているかをタンパク質レベルで検討する。 さらには、GABAA受容体サブユニットの発現低下が、坐骨神経カフモデルマウスの疼痛に関連していることを明らかにするために、サブユニット特異的アゴニストを投与し、疼痛閾値の低下の改善が認められるかを検討する。あるいは、siRNAなどの手法を用い、脊髄後角でのδサブユニットの発現を減少させると、疼痛閾値が低下するかどうかを検討する。 これらの実験により、神経障害性疼痛発症のメカニズムを明らかにし、メカニズムに沿った治療法の確立に役立てることを最終目標とする。
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次年度の研究費の使用計画 |
現在、本研究の根幹であった神経障害性疼痛モデルマウスの確立と、モデルマウスの脊髄後角細胞におけるGABAA受容体介在性tonic電流が減少しているということが実験により明らかになった。しかし、その詳細なメカニズムについては解明できておらず、この実験を単年度で達成するには期間があまりにも短く、当初の予定通りの計画が進んでいる状態ではあるが、研究計画を完遂するためには、さらなる実験を行う必要がある。 実験に必要な、試薬・物品の購入、この研究の成果を発表するための学会参加旅費や、情報収集に必要な研究打合せ旅費、また雑誌へ投稿するための費用。
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