周術期管理方法の工夫により術後患者の回復を促すことが,周術期のトピックスとして実践されている。この中で,特に重要と考えられるのが周術期栄養管理である。術前,術後の栄養介入に関して研究が進んできているが,術中栄養に関しての研究はほとんどなされていない。本研究では,術中のアミノ酸含有輸液が,患者の異化亢進に伴う筋萎縮を抑制するという仮説を基礎研究と臨床研究で検証することを目的とした。 今回,基礎研究では十分にアミノ酸輸液と筋萎縮との関係を明らかにすることはできなかったが,臨床研究においてその可能性について明らかにすることができた。術中の適切なアミノ酸投与量を推定するために,集中治療領域での研究を参考にしようとエビデンスを集積したが,蛋白投与量が予後を改善するという報告は発見できなかった。まず,このことについてsystematic reviewを論文として発表した。蛋白投与量が筋力に影響を与えているかについては,後方視研究を行うことで蛋白投与量がリハビリテーションの状態に影響を与える可能性を明らかにできた。 この知見をもとに術中および集中治療室における栄養介入が患者の筋萎縮を抑制できることが明確になれば,早期離床から早期退院を可能にし,患者にとって福音になるだけでなく,医療費抑制にも寄与することが期待できる。
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