抑うつ状態において虚血性心疾患患者の予後が悪化するという報告がなされるようになった。原因は明らかでないが、抑うつ状態における内在性臓器保護機構の障害が予後悪化の一因ではないかと考える。またJAK-STATの活性化を介さずにPI3-Aktを活性化させることが、抑うつ状態において内在性臓器保護効果を発揮させるために重要な要素である可能性が高い。加えて、予測できない虚血イベントにも応用できるため、薬理学的ポストコンディショニング法の開発は臨床的に非常に有用である。今回、抑うつ状態における内在性臓器保護機構抑制とその機序を明らかにし、抑うつ状態における有効な薬理学的ポストコンディショニング法の確立を目的として研究を行う。 抑うつ状態における薬理学的ポストコンディショニング法の開発として、正常、抑うつ状態ラット心筋虚血再灌流モデルを用いて、再灌流後の短時間虚血、吸入麻酔薬であるセボフルラン、Rhoキナーゼ阻害薬である塩酸ファスジルの投与が心筋梗塞サイズに与える影響について検討しようとしたが、抑うつ状態ラットモデルの作成が困難であった。 そのため代替として、内在性臓器保護機構のターゲットであった、JAK-STAT系の活性を介さずにPI3K-Aktを活性化させる薬理学的ポストコンディショニング法の開発を行った。 塩酸ファスジルはCOX-2阻害薬であるNS398、JAK-2阻害薬であるAG490の投与下でも心筋保護効果を発揮した。 本研究において本来の目的であった抑うつ状態下での検討を行うことは出来なかったが、塩酸ファスジルがJAK-STATの活性化を介さずに心筋保護効果を発揮することが可能であることが明らかになった。
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