我々は独自に開発したマウス脊髄虚血モデルにおいて、遅発性対麻痺を示すことならびにその病態生理にCaspase3を必須とするアポトーシスが関与してることを明らかにした。このモデルでは、脊髄虚血24時間以降から脊髄における炎症性サイトカインの放出が認められた。このことから、このマウス遅発性脊髄障害には炎症性サイトカインが関わる炎症反応が関与していると仮説した。そこで、虚血再灌流障害において炎症性サイトカイン放出に関わるToll様受容体(TLR)の関与を検討した。TLR4を欠損したマウスでは、脊髄虚血後遅発性対麻痺は発生しなかった。そこで、TLR4の下流にあたるMyD88経路とTRIF経路それぞれの関与を検討することを目的として、MyD88欠損マウス、TRIF欠損マウスを用い脊髄虚血侵襲を与えた。その結果、TRIF欠損マウスでは大動脈遮断により遅発性対麻痺を発症したが、TLR4欠損マウスでは脊髄虚血後の対麻痺は呈さなかった。このことからマウス脊髄虚血後遅発性対麻痺の発症には、TLR4-MyD88-サイトカイン放出の関与が強く示唆された。 今後、遅発性対麻痺の予防方法として、TLR4-MyD88-炎症性サイトカインという一連の経路を抑えることが示唆された。
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