研究実績の概要 |
薬剤に対する患者ごとの感受性の違いを科学的に評価し、その「個体差」に応じて麻酔薬剤の選択が可能になれば、より安全性の高い麻酔を実現することができる。子宮筋の弛緩出血を防ぐ目的で頻用される子宮収縮薬メチルエルゴメトリンマレイン酸塩は、冠動脈攣縮の副作用から一過性の心筋虚血を引き起こすことがあるが、これを薬剤投与前に予見することは困難である。本研究では、冠動脈攣縮に関わる各種タンパク質の遺伝子一塩基多型(SNPs; Single Nucleotide Polymorphism)を患者ごとに解析し、帝王切開患者でのメチルエルゴメトリンマレイン酸塩投与に伴う冠動脈攣縮の発生との関連から同薬剤選択の臨床的指標を提示することを目的とした。帝王切開術を予定されたアメリカ麻酔学会Physical Status 1-3の妊婦を無作為に抽出した。心合併症をもつ患者およびその他の理由でメチルエルゴメトリンマレイン酸塩を使用しない症例は対象から除外した。採取した血液からアルコールにて析出させたDNAを単離した。PCR(Polymelase Chain Reaction)を用いて目的とする各遺伝子を増幅するためのプライマー遺伝子鋳型、およびSNPsを検出するため蛍光色素で標識したプローブDNAが必要になるが、これらの作成に要する労力と時間を削減するため他施設に作製を注文した。現存のリアルタイムPCR装置システム(LightCycler480 system2, Roche)を用い、融解曲線分析から各患者ごとの遺伝子型を決定した。。帝王切開手術中に弛緩出血を予防する目的でメチルエルゴメトリンマレイン酸塩を児娩出後に投与し、投与前後の心電図変化及び胸部症状の有無を統計学的に分析した。得られた遺伝子型と心電図変化には関係性について解析を行った。
|