研究課題/領域番号 |
25861397
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研究機関 | 和歌山県立医科大学 |
研究代表者 |
小林 悠佳 和歌山県立医科大学, 医学部, 助教 (20511562)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 神経障害性疼痛 / マトリックスメタロプロテアーゼ / マクロファージ / 神経炎症 |
研究実績の概要 |
昨年度は、神経傷害により傷害部位に集積したマクロファージがMMP12の産生源となること、一部のマクロファージは骨髄細胞に由来すること、MMP12特異的阻害薬が神経障害性疼痛を緩和することを明らかにした。 神経傷害初期(傷害直後、2、4、6日後)にマクロファージ枯渇薬(CLO:Clophosome-A)を神経周囲に投与することで傷害7日目における坐骨神経部分結紮(partial sciatic nerve ligation: PSL)による触アロディニアおよび熱痛覚過敏が軽減された。また、PSL後期(傷害7、9、11、13日後)にCLOを神経周囲に投与することでも触アロディニアおよび熱痛覚過敏が緩和された。PSL7日後の坐骨神経において認められるMMP12、TNF-α、IL-1βのmRNA発現増加はCLOの神経周囲投与により有意に抑制された。傷害神経内の血管動態を観察するため、蛍光色素DiIを経心的に灌流し、坐骨神経の全載標本を共焦点レーザー顕微鏡にて観察した。PSL7日および28日後において坐骨神経の障害部周囲の血管からDiIの漏出が認められ、経日的に複雑な血管網が形成された。Sham群と比較してPSL群では血管面積および血管の分枝数が増加し、血管新生が確認された。さらに、DiIとマクロファージマーカー(抗F4/80抗体)で染色した結果、PSL群では新生血管網を取り囲むようにF4/80陽性マクロファージの集積が観察された。PSL初期におけるCLOの神経周囲投与により血管網の形成を抑制する傾向が認められた。 以上の結果より、傷害神経に集積するマクロファージはMMP12や炎症性サイトカインの重要な産生源となり、神経障害性疼痛の発症および維持のどちらにも重要な役割を担うことが示された。また、傷害神経における血管新生により傷害部位への免疫細胞の遊走を促進している可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
傷害神経に集積するマクロファージがMMP12の産生源となることを確認することができた。さらに傷害神経に集積するマクロファージの血管新生への関与の可能性が示され、間接的ではあるがMMP12も血管新生において重要な関連因子となることが示唆された。
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今後の研究の推進方策 |
近年、MMP12は神経軸索の周囲を取り巻く髄鞘の構成因子であるミエリンタンパク(myelin basic proteinやmyelin associated glycoprotein)を基質とすることが報告されている。これまで神経障害性疼痛の形成に一次知覚神経の脱髄が関与することが知られており、MMP12によるミエリンタンパクの分解が神経障害性疼痛の病態に寄与する可能性が考えられる。MMP12による疼痛制御の作用点の一つとして末梢神経における脱髄への関与について詳細に検討する。
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