研究実績の概要 |
マウス由来マクロファージ細胞株(RAW264.7)においてLPS処置24時間後にMMP12の遺伝子およびタンパクの発現が増加し、IL-1βmRNAはLPS処置3時間後で既に増加していた。これまでに傷害後神経において傷害早期でマクロファージに由来するIL-1βやmacrophage inflammatory proteins (MIPs)が増え、それに遅れてMMP12が増加してくることを明らかにしている。これら炎症性サイトカインおよびケモカインによるMMP12の発現への影響を検討した。傷害後にMIP-1またはMIP-2中和抗体を神経周囲に投与 (傷害直後、3、6日後)することでMMP12mRNAの発現増加が有意に抑制された。また、MIP-2の受容体であるCXCR2の拮抗薬であるSB225002の神経周囲投与(傷害直後、1~6日後)によってもMMP12mRNAが抑制された。これら中和抗体および拮抗薬は傷害後の触アロディニアおよび熱痛覚過敏を有意に減弱する用量および投与タイミングを使用した。 近年、軸索周囲を覆うミエリンタンパクがMMP12の候補基質として報告されていることから、まず、傷害後神経における脱ミエリン化におけるマクロファージ枯渇の影響を検討した。マクロファージ枯渇薬であるClophosome-Aを傷害神経周囲に複数回投与(傷害直後、2、4、6日後)することにより傷害後7日目で観察されるミエリンタンパク(MBP, MAG)のmRNAの発現減少が抑制された。 したがって、傷害後の末梢神経周囲に集積するマクロファージによって産生されるMMP12は傷害後早期に産生・放出される炎症性サイトカインおよびケモカインによって発現調節され、MMP12が神経傷害後に軸索周囲のミエリンタンパクの分解に寄与し、神経炎症の促進因子となる可能性が示唆された。
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