研究実績の概要 |
がん性腹膜炎を有するがん患者では難治性の腹水がしばしばみられる。この腹水貯留はによって、腹部膨満、さらに消化管運動障害、食物通過障害をきたすことは周知のことである。しかしながら、がん性腹水貯留の成因としては、栄養・低アルブミン血症・リンパ管閉塞・腫瘍が産生するサイトカインなど多くの要因が考えられているが、その実態は未だ不明のままである。
Agreらはアクアポリン (Aquaporin, AQP) とよばれる、水分子のみを選択的に透過させ、他のイオンや物質を透過させない水チャネル (water channel) を発見した。近年、がん研究の領域でもAQPに関する研究が行われている。がん種によってAQP subset 発現パターンが異なっていること、例えば星状細胞腫では病理組織学的異型度とAQP4の発現に相関があり、脳浮腫形成に関わっているとの指摘がある。また卵巣がんではAQP5の発現が亢進している。さらに、AQP1は腫瘍血管内皮に広く存在しており、これらのことからAQPが腫瘍の増大・浸潤・転移に関与しているのではないかという仮説も立てられている。
本研究は、AQPとがん性腹水貯留の関連について明らかにすることを目的として行っている。今年度は、ラットに接種することによって高頻度にがん性腹膜炎を惹起する胃がん細胞 85As2細胞および、通常の胃がん細胞 MKN45細胞からタンパク質、mRNAを抽出しAQPを確認を行っているところであるが、いまだ確定的な結果を得ることができていない状況である。
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