研究概要 |
本年は癌細胞浸潤におけるポドプラニンの役割を検討した。筋層浸潤膀胱癌細胞株YTS-1, T24および筋層非浸潤膀胱癌細胞株KK47を用いて以下の実験を行った。 ポドプラニンのタンパク質発現をウェスタンブロッティング法により確認したところYTS-1, T24, KK47の順に発現が低くなることを確認した。この結果から筋層浸潤能の高い細胞にポドプラニンが高発現すると考えられた。ポドプラニン遺伝子発現をpCas9プラスミド導入によりゲノムDNA改変を行うことで抑制したYTS-1と親株のYTS-1、ポドプラニン遺伝子を過剰発現させたT24と親株のT24を用い移動能を比較したところ、ポドプラニン発現の高い株において移動能が亢進した。 さらに、ポドプラニンの糖鎖修飾と血小板凝集との関連を検討した。ポドプラニンはリンパ管内皮細胞マーカーとしても知られるが、癌細胞においては血小板凝集に関与することが報告されていることから、膀胱癌においても血小板凝集に重要な役割を担うと推測された。そこでコア2糖鎖構造を形成する酵素をsiRNAを用いて抑制すると、ポドプラニン分子量の減少が確認され、確かにポドプラニン上にコア2糖鎖構造が存在する可能性を示唆するデータを得た。さらにポドプラニン上のコア2糖鎖構造の減少により血小板凝集により分泌されるサイトカイン量が有意に低下することを確認した。 以上の結果より、膀胱癌の浸潤・転移においてポドプラニンが関与する可能性が示唆された。
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