本年は、ポドプラニン分子と相互作用する分子の探索を行った。 これまでの結果から、ポドプラニン分子の発現が膀胱癌細胞の移動能、浸潤能に影響を与えている可能性が示唆されたため、細胞表面に発現する他の分子と相互作用するものと考えた。ポドプラニン分子は糖鎖付加部位が多く、ムチン様の性質を持つため他のムチン型タンパク質と細胞表面で相互作用する可能性が考えられたため、免疫沈降法を用い相互作用タンパク質の解析を行ったが、特定の分子を絞り込むには至らなかった。 一方、生体内においてポドプラニンが膀胱癌の転移に関与するかについてヌードマウスを用いた癌転移モデルにより検討を行った。ヌードマウスの尾静脈よりヒト膀胱癌細胞株YTS-1を注射し、肺における腫瘍結節の有無を確認する実験を行った。用いた細胞は、これまでに作製したポドプラニン高発現YTS-1細胞株とポドプラニン低発現細胞株を用いた。癌細胞注射後、4週間で肺を摘出し、肺の重量およびブアン固定後に肺の腫瘍結節数を算出したところ、ポドプラニン高発現株を移植したマウスにおいて、肺の総重量および結節数の増加が認められた。以上の結果は、ポドプラニンが生体内において膀胱癌の浸潤を促進する可能性が示唆された。 ポドプラニンが転移および浸潤に関与する可能性は高まったが、ポドプラニンの膀胱癌における分子メカニズムは未だ不明な部分が多く、相互作用するタンパク質を含め更なる解析が必要であると考えられた。
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