【目的】スタチンは、pleiotrophicな作用として前立腺癌に対して抗腫瘍効果を示すことが報告されているが、そのメカニズムは明らかにはなっていない。今回、我々はde novoアンドロゲン産生経路の出発点であるコレステロールに注目し、スタチン投与による細胞内のコレステロール濃度への影響、また同時に、スタチン投与によるアンドロゲン産生経路の各酵素の発現への影響を調べ、去勢抵抗性前立腺癌におけるスタチンの治療薬としての可能性及びスタチンへの併用薬の有無を探索した。【方法】PC-3細胞を用いシンバスタチン投与後の細胞内コレステロール濃度、qPCRでのアンドロゲン産生経路の各酵素の発現変化の評価を行った。また細胞増殖はMTSアッセイ、遊走能はwound healing アッセイ、培養液中のアンドロゲン濃度の測定はLC-MS/MS、Aktのリン酸化は、WBにて評価した。【結果】シンバスタチン投与によりPC-3細胞内のコレステロール濃度の低下を認めた。アンドロゲン産生経路の酵素ではAKR1C3の顕著な発現上昇を認めた。アンドロステンジオン投与後のPC-3培養液中におけるT及びDHT濃度はどちらもスタチン投与群で高値であった。AKR1C3をsiRNAでノックダウンし、シンバスタチンを投与したところ、さらなる細胞増殖効果及び遊走能抑制効果を認めた。同様に、AKR1C3の阻害作用を持つmeclofenamic acidをシンバスタチンに併用したところ、AKR1C3のsiRNAと同様の効果を認めた。さらに、スタチン及びmeclofenamic acid併用にてPC-3における、更なるAktのリン酸化の阻害を認めた。【結語】スタチン投与により、AKR1C3の発現が上昇し、その阻害剤であるNSAIDsの併用することで、ホルモン不応性前立腺癌に対してより抗腫瘍効果の得られる可能性が示唆された。
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