本年度は、昨年度に引き続き、患者個々のheterogeneityを反映したCRPC研究を可能とすることを目的として、群馬大学倫理委員会の承認の下、治療経過中に尿閉を来たしその解除目的に経尿道的前立腺切除術を施行されたCRPC患者からのCRPC組織採取を行い、合計11例のCRPC組織を得た。 新規癌細胞初代培養法(cancer tissue-originated spheroid:CTOS法) に関しては、昨年度残念ながらCTOSの形成に至らなかったことから、本年度は改良点として、経尿道的前立腺切除術終了後まで組織採取を待つのではなく、術中に組織を採取することで、できるだけフレッシュな状態での組織採取を試みた。さらに電気メスによる前立腺癌細胞へのダメージを抑えるために、なるべく大きな切片で素早く切離し、組織周囲を素早くトリミングした上で、CTOS法を行った。具体的な方法としては、採取されたCRPC組織の一部をただちに機械的・化学的に処理し、適切な篩にかけ、直径数100 μmの腫瘍細胞塊を回収した。これを、幹細胞培地で数時間浮遊培養し、CRPC組織からの初代培養を試みたが、昨年度と同様に残念ながらCTOSの形成には至らなかった。 また、採取したCRPC組織のアンドロゲン維持機構解明のため、副腎性および精巣性アンドロゲンの定量を行った。その結果、CRPC組織内において、DHEAの前駆体であるDHEA-Sの濃度がこれまで最も高濃度に存在すると考えられていたDHEAよりも高濃度に存在することが分かった。現在、さらなる解析のため、CRPC組織における細胞膜トランスポーターの発現解析およびステロイド代謝酵素の免疫染色を行っている。
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