前立腺癌細胞株LNCaP、LNCaPから当研究室で樹立したandrogen非依存性株LNCaP-SF、androgen receptor (AR) 陰性のPC3、DU145とマクロファージ様細胞株THP-1、U937を用いて各種実験を行った。遊走能については一部の癌細胞ではCCL17だけではなく、CCL22でも亢進することが明らかとなった。受容体であるCCR4の発現をimmunocytochemistoryで調べた結果、ほとんどの前立腺癌細胞株にも発現が十分あることがわかった。また、western blotにても同様に前立腺癌細胞株におけるCCR4の発現が明らかとなった。一部の前立腺癌細胞ではこのCCR4の発現は、マクロファージ様細胞と共培養することによって亢進することも明らかとなった。組織マイクロアレイを用いてヒト前立腺癌組織でのCCR4も調べたところ、正常前立腺組織と比較し発現が亢進していることが明らかとなった。CCL17に対する中和抗体を用いたところ、マクロファージ様細胞と共培養した時に亢進した前立腺癌細胞の遊走能が抑制されることが分かった。これらのことから前立腺癌細胞はマクロファージとの相互作用によって分泌されたCCL17および癌細胞にあるその受容体CCR4を介して、遊走能が亢進することが考えられた。CCL17-CCR4を抑制することで、前立腺癌の転移をも抑制できる可能性があり、あらたな治療ターゲットとなる可能性が明らかとなった。
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