まず膀胱炎症モデルの作成においては、雌性SDラットを用い、イソフルレン麻酔下に0.1N塩酸100μLを1分間膀胱注入し、膀胱を障害した。1週間後に膀胱を摘出し組織学的検討を行った。H&E染色では粘膜下層の著明な浮腫と炎症細胞浸潤を認めた。Uroplakin 3Aに対する免疫染色では陽性細胞が消失していた。走査電子顕微鏡にて膀胱粘膜を観察すると、コントロール群で見られる細胞境界が消失しており、tight junctionの消失を意味するものと思われた。Evans Blueを膀胱注入し組織を検討してみると、粘膜下層から一部筋層に至るまでEvans Blueが浸透している所見が確認でき、尿路上皮のバリア機能の低下を意味するものと思われた。 GFP遺伝子導入ラットの大腿皮下組織より採取した脂肪由来幹細胞を膀胱炎症ラットの尾静脈より注入し、近赤外線in vivoイメージにより評価したところ、肺および膀胱炎症巣への幹細胞の集積を確認した。また膀胱を摘出し、GFPに対して免疫染色を行ったところ陽性細胞が確認できた。これらにより脂肪由来幹細胞には生体内で障害された臓器に集積する性質があることが示された。 今年度はさらに研究をすすめ、炎症の軽減の有無、頻尿や疼痛の改善効果について検討したい。これらの効果を有することが証明できれば、脂肪由来幹細胞の静脈注入療法は難治性間質性膀胱炎の新規治療となることが期待される。また阻血腎障害モデルでは同様の検討で尾静脈注入した脂肪由来幹細胞が障害された腎へ集積し炎症性サイトカインを抑制することが示されているが、他の臓器の炎症性疾患の治療にも応用できる可能性を秘めており、本研究の成果は非常に意義深いものになるであろうと考えている。
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