勃起不全(ED)患者は急激に増加しており、再生医療による新たな治療が期待されている。CD133陽性細胞は従来のCD34陽性細胞よりもさらに増殖能や分化能が高い幼弱な細胞集団であるため、組織再生における分化転換による直接的な作用だけでなく、血管内皮増殖因子 (VEGF)や神経成長因子(NGF)を分泌する間接的な作用により再生を促進し、より強力な神経・血管再生が可能となる。重症EDへの治療応用を目指し、ヒト骨髄由来CD133陽性細胞移植による陰茎海綿体組織の再生効果を検討した。8週齢雄ヌードラットの片側陰茎海綿体 (2X2 mm)を切除、陰茎海綿体損傷モデルを作成し、切除のみの群(切除群)、切除部位にアルギン酸ゲルシートを貼付した群(Alg群)、貼付シートにヒト骨髄由来CD133陽性細胞を移植した群(CD133群)、およびsham手術群(sham群)を設定した。各群において12週後にmajor pelvic ganglionの電気刺激下に陰茎海綿体内圧(ICP)/平均動脈圧(MAP)を測定し機能的再生を評価した。ICP/MAPの平均値は、切除群が0.058、Alg群が0.256、CD133群が0.343、sham群が0.372であった。CD133群(p=0.024)およびsham群(p=0.028)では切除群に比較してICP/MAPは有意に高く、CD133陽性細胞移植による機能的再生効果を認めた。組織再生評価目的にHE染色およびαSMA、S100による免疫染色を施行した。切除群およびAlg群においては切除組織に組織再生を認めなかったが、CD133群ではsham群と同等の血管および神経再生を認めた。再生機序の解明のため、CD133群およびAlg群においてアルギン酸ゲルシートを4日目に摘出、定量リアルタイムPCR法によりラット由来VEGFおよびNGFを測定した。CD133群はAlg群と比較して、有意にVEGF(p<0.001)およびNGF(p=0.031)を発現しており、ラット由来内因性growth factorのupregulationを認めた。CD133陽性細胞移植による陰茎海綿体組織再生は、陰茎海綿体の再生手段として新たな選択肢になりうることを示した。
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