私たちはこれまでの研究で、膀胱癌細胞に対し新規光感受性物質と紫外線の併用により、高い殺細胞効果があることを証明した。しかし、薬剤投与に関しては臨床応用に向けクリアすべき課題も多い。私たちは、紫外線( 特にUVA-1 )は膀胱癌細胞に対しアポトーシスを誘導することを見出した。しかし、その作用機序は不明である。本研究で私たちは、UVA-1照射によるアポトーシス誘導機序を解明することで、中心となる分子を同定し、分子標的による新しい膀胱内光線力学療法の開発を目的にする。またUVA-1は正常細胞と比べ、悪性細胞に対し感受性がが高いとの報告がある。UVA-1は日焼けサロンで使用される紫外線であり、人体への安全性も十分確立されている。これらのことから私たちは、膀胱癌に対するUVA-1によるPDTは安全で腫瘍特異性の高い治療法になると考え研究を行った。UVA-1を膀胱癌細胞に照射するとlow gradeな腫瘍では10J程度の低い線量でも30%程度アポトーシスを誘導できることが確認できた。本研究による治療法は筋層非浸潤性膀胱癌の再発予防が中心となっているため、低悪性度な癌細胞に対し低い線量で効果を認めるという発見は非常に優れた結果であった。ただしT24などのhigh gradeな腫瘍については、UVA-1の照射線量として120Jは必要との結果であった。high gradeな腫瘍に対しては、既存の抗がん剤と併用することで相乗効果が期待できるのではと考えている。
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