研究課題
若手研究(B)
研究①結石モデルマウスへのM-CSFの投与によるM2(マクロファージ)の活性化8週齢雄のC57BL/6Jに対し、腎結石モデルマウスの手法に順じ、シュウ酸前駆物質グリオキシル酸(GOx) 80mg/kgを6日間腹腔内投与を行った。またPBS、ヒト組換え型ヒト組換え型M-CSF 5.0μg/bodyをそれぞれ連日皮下投与した2群を作成する。6日目に腎検体・血液の採取と24時間蓄尿を行った。腎結石形成量はM-CSF投与群で有意な減少を示したが尿中結晶量は差を認めなかった。M-CSF投与群では結石関連遺伝子であるオステオポンチン・CD44・MCP-1の発現が低下しており、腎組織中のM2発現が増加していた。研究②腎結石形成に関わるヒト血中・尿中Mφ関連蛋白のマルチプレックス解析名古屋市立大学病院泌尿器科 尿路結石専門外来および一般外来を受診した、結石の既往のない対象群 (CON) 56名、初発結石患者群(初発群) 24名と再発性結石患者 (再発群) 42名を対象とした。 すべての患者は、血尿・膿尿・蛋白尿・尿糖などの明かな検尿異常を認められず、腫瘍・膠原病などの併存疾患・既往を持たず、免疫抑制剤・ステロイドの服用をしていなかった。また初発・再発結石患者の結石は、すべてシュウ酸カルシウム結石であった。尿生化学データには各群に有意差を認めなかった。18因子のマルチプレックス解析の結果、尿路結石患者は、非結石患者と比べて尿中炎症性ケモカイン高値であり、抗炎症サイトカインが低値であった。尿路結石形成過程には、腎における炎症性マクロファージの活性化と抗炎症マクロファージの抑制のバランスが関与している可能性がある。またこれらの因子は、尿路結石形成リスクを反映するマーカーとなり得ると考えられた。
3: やや遅れている
研究①である結石モデルマウスを用いた走化因子によるマクロファージ極性変化による腎結石形成の観察に関しては概ね順調に進んでいる。研究②である腎結石形成に関わるヒト血中・尿中Mφ関連蛋白のマルチプレックス解析に関しては、泌尿器科の診察のなかでほぼ必須である尿検体を用いた評価・解析は順調に進んでいる。しかし血液検体となると採血施行患者に絞られ、さらに採血スピッツの本数の増加から同意を得られる数にも制限がでるため、なかなか目標となる検体数が集まりにくいため、解析まで至っていない。今後、検体の蓄積を重ねて、速やかに尿検体と同様のマルチプレックス解析を用いた検討を行いたい。
今後は平成26年度以降に、研究③として「腎乳頭部の結石形成部位における2つの極性のMφ発現の分析」と、研究④として「ヒト末梢血Mφの分離と、極性および腎結石の貪食・分解機能の解析」を行う予定である。ともにすでに名古屋市立大学大学院医学研究科倫理審査委員会の承認を得ており(承認番号929と930)、現在症例の蓄積を行っている。研究・解析に必要な機器は概ねそろってきているため、上記【現在までの達成度】でもふれたが、検体の蓄積に時間がかかることが予想されるため、当施設(名古屋市立大学病院)のみならず、場合によっては関連病院にも拡げて症例の蓄積を行っていく必要があると考えている。
ヒトを対象とした研究②においては、前述の通りに血液検体がなかなか集まらないこともあり、解析作業が遅延している。マルチプレックス解析を行う予定であったが、行えず、消耗品の購入が行えていないため、次年度への繰り越しとなった。次年度、検体の収集を早急に完了し、予定の消耗品を購入する予定である。
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Urolithiasis
巻: 42 ページ: 17-28
10.1007/s00240-013-0612-5
Journal of Urology
巻: ― ページ: 印刷中
10.1016/j.juro.2014.01.013
Journal of the American Society of Nephrology