研究課題
方法:名古屋市立大学病院および関連施設においてTULを行った上部シュウ酸Ca結石患者(12例)を対象とした。手術時に腎乳頭の1.RP部(RP群)、2.正常部(normal群)の腎盂粘膜を生検鉗子にて採取した。control群として、同時期に非結石患者で尿管鏡視および腎摘除を行った患者(4例)の腎盂粘膜を採取した。研究1:RPおよび周囲組織の形態をHE染色と、Caを同定するvon Kossa染色にて比較し、さらに超微細構造を透過型電子顕微鏡(TEM)にて観察した。研究2:RP群、normal群、control群の腎盂粘膜RNAを抽出し、cDNAを合成後、マイクロアレイにて遺伝子発現を網羅的に解析した。研究3:3群間のOPNおよびMφ関連遺伝子の発現を、定量PCR、免疫染色を用いて評価し比較した。結果:研究1:RPは、HE染色では腎乳頭において尿細管上皮細胞内側の間質に存在し、von Kossa染色では黒色に染まるリン酸Ca塩の含有が認められた。TEMの観察において、RPは基底膜に包まれており、周囲にはコラーゲンおよびOPNなどの細胞外マトリックスが多量に存在することが明らかになった。研究2:クラスター解析から、RP群およびnormal群は、control群と分離されるものの、個体差が大きいことが分かった。Gene Ontology解析から、RP群では、normal群と比べて、骨軟骨腱形成/細胞増殖および輸送/Ca2+活性/炎症促進に関与する遺伝子の発現が有意に高値であり、酸素輸送/抗酸化能/ケモカイン活性/炎症および免疫応答に関与する遺伝子の発現が有意に低値であった。研究3:RP群では、normal群と比べて、炎症性Mφに係わるIL-6、MCP-1の遺伝子発現が有意に高値で、抗炎症性Mφに係わるCCR2の発現が有意に低値であった。
3: やや遅れている
本学臨床研究の倫理審査委員会での承認に時間を要した点と、統一した術式にて検体を集めることが困難であったため、最終的に一人の術者が症例を選び、検体の採取に努めた。また、採取した組織は微量なものであり、マイクロアレイやPCRなどの免疫組織学検査を行うためにはDNA増幅作業が必要であり、専門業者との調整や、サンプルのクオリティチェックなどに時間を要した。
今後はさらに検体の採取を続け、結石成分ごとに各患者群間での遺伝子発現の相違が解析できるようにしたい。さらに、IPAなどのツールを用いたパスウェイ解析や、PCRなどによるvalidationが必要と考えられるため、平行して準備を進めていきたい。
すべて 2014
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 2件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (5件) (うち招待講演 1件)
Urology
巻: 84 ページ: 565-570
10.1016/j.urology.2014.04.020.
Journal of Endourology
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