研究課題
本研究は、精子形成におけるNumbおよびNumb-likeの機能を解析することを目的とした。まず正常精巣におけるNumbおよびNumb-likeの発現を検討したところ、精母細胞以降の精細胞に発現しており、減数分裂後ではNumb-likeの発現量が相対的に増加していることが明らかとなった。次にIn vivoにおいてNumbおよびNumb-likeの機能をノックダウンするため、NumbまたはNumb-likeに対するsiRNAを発現するベクタープラスミドを構築した。構築したプラスミドを増幅ののち、精巣に注入し、100V 18回の矩形波電気刺激(エレクトロポレーション法)を与え精巣実質に導入した。遺伝子導入後、1・2・4・8週で組織を評価した。導入遺伝子は導入後4週間までの間、その発現を維持していることが明らかとなった。またエレクトロポレーションによる組織障害は、導入1週以降ではほとんど認められないことがわかった。次にNumbおよびNumb-likeの精細胞分化における役割を検討するため、オスSDラットをA群:Numbノックダウン群、B群:Numb-likeノックダウン群、C群:NumbおよびNumb-likeノックダウン群、D群:コントロール群の4群にわけて、それぞれ遺伝子導入した。4群の間で、遺伝子導入された精細胞(精祖細胞、精母細胞、円形精子細胞、伸長精子細胞)の割合を算出し、NumbおよびNumb-likeのノックダウンが精細胞分化のどの段階に影響を及ぼすかを検討した。その結果、A群では円形・伸長精子細胞が減少しており、B群およびC群では伸長精子細胞の数が減少していた。本研究の結果により、NumbおよびNumb-likeは減数分裂以後の精細胞の分化に関わっており、NumbとNumb-likeはそれぞれ拮抗的に作用していることが示唆された。NumbおよびNumb-likeは哺乳類ではよく保存されている遺伝子であり、ヒト精子形成機構の解明、精子形成障害の治療法開発へつながるものと考えられた。
すべて 2015
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