研究実績の概要 |
膀胱癌においてはBCGの副作用で治療継続できない症例や、BCG・抗癌剤の膀胱内注入療法施行後に再発・進展する症例も数多く存在し、より強力で根治性の高い癌治療の開発は急務の課題である。そこでPI3K-Akt-mTOR pathway及びそのフィードバック機構を解明し、その制御によって膀胱癌に対する新規治療戦略を確立する研究に着目するに至った。マウス膀胱癌細胞株MBT-2に対するNVP-BEZ235の細胞傷害効果をWST assayにて検討した。次に、マウス膀胱癌同所性モデルにてNVP-BEZ235膀胱内注入療法の抗腫瘍効果の検討を行った(n=30)。また、PI3K-AKT-mTOR pathwayの阻害効果に関してwestern blottingを用い、pAkt, pS6、p4EBP1の発現の程度にて評価した。in vitroにおいてNVP-BEZ235投与により濃度依存性の抗腫瘍効果を認めた。また、pAkt、pS6、p4EBP1の発現を濃度依存性に有意に抑制した。マウス膀胱癌同所性モデルでは、NVP-BEZ235膀胱内注入(40μM)群では膀胱重量が 72.8 ± 54.5 mgと、コントロール群206.6 ± 154.9 mgと比較して有意な低下を認めた( p<0.05)。western blottingではコントロール群と比較してpAkt、pS6、p4EBP1の発現が有意に抑制されており、in vitroの結果との相同性を認めた。以上より、筋層非浸潤性膀胱癌に対するadjuvant治療としてNVP-BEZ235の膀胱内注入療法が新たな治療選択枝となりうることが示唆された。
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