頻尿に対する鍼灸刺激の効果として、仙骨部鍼刺激は酢酸によって惹起された過剰な膀胱求心性情報伝達に介入し、頻尿を改善させる。今年度は灸の治療効果に着目し、頻尿モデルラットに対する灸を用いた仙骨部への熱刺激が排尿機能に及ぼす影響を検討した。雌性SDラットに対して膀胱瘻を作成し、頻尿は膀胱内への酢酸注入により誘発した。覚醒下にて膀胱内圧を測定し、排尿間隔、最大膀胱内圧、基礎圧、排尿閾値圧の評価を行った。酢酸を膀胱内に注入することにより排尿間隔が有意に短縮し、頻尿が確認できた動物に対して第3仙骨神経支配領域への透熱灸を左右5壮ずつ行った。灸刺激群では排尿間隔が延長する傾向が見られたが、有意な変化ではなかった。最大膀胱内圧および排尿閾値圧は有意な変化はなかったが、基礎圧は対照群でのみ有意に上昇した。頻尿に対する灸刺激では、鍼刺激のような顕著な変化が観察されなかった。灸は鍼のように皮膚から骨膜の広範囲に刺激を行うことが難しいことから、効果が見られにくいものと考えられた。
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