研究課題
若手研究(B)
初年度である平成25年度は、性感染症におけるアデノウイルスの実態調査及び分子疫学的研究を遂行するために、当初の計画通り、性感染症に関連する専門医や研究者と連携をとり、研究体制の確立を目指した。加えて、研究遂行のための臨床検体の採取に関して、研究計画書や主治医・患者説明書や同意書等を作製し、倫理審査会の承認を得た。性感染症の中でも特に、尿路感染症における非淋菌非クラミジア性尿道炎に着目し、男性患者を中心とした病原体スクリーニング体制の整備を進めた。複数種のバクテリアやウイルスをPCR法によって検出し、増幅されたDNA産物をシークエンス解析する一連の検出系を検討し、構築した。既存の臨床検体を用いた検討では、これまでの系と同等に病原体微生物の検出が可能であることがわかった。また、わずかではあるが尿道炎患者由来の臨床検体を用いたスクリーニングにより、複数種のアデノウイルスを同定した。加えて、出血性膀胱炎の患者からもアデノウイルスを同定した。一方、性感染症における関連病原体の周知等を含めたインターネットを用いた感染症啓発効果に関する検討も進め、広く応用可能な啓発方法を開発し提案した。また臨床検体からのウイルス分離では、アデノウイルス37型が尿やうがい液から分離された。今後は検体数約200例を目指し、構築したスクリーング系を応用し、尿道炎患者からの尿やうがい液検体から、原因微生物の同定を進める。
1: 当初の計画以上に進展している
病原体スクリーニング法の開発においては、尿やうがい液からの網羅的な病原体検出を目指したため、既存の検査法では、検出・同定が困難なものがあった。そのため、独自での調整が必要であり想定よりも多くの時間を要した。しかしながら検討の結果、当初の想定よりも多くの微生物を対象とした同一条件下で検出できる、簡便な検出系を確立できた。具体的には淋菌、各種クラミジア、各種マイコプラズマ、各種ウレアプラズマ、腐性ブドウ球菌、トリコモナス、ヘルペス、インフルエンザ菌、パラインフルエンザ菌、髄膜炎菌、肺炎球菌、溶連菌群、アデノウイルス等である。これらの病原体を検出対象とした統一した試薬組成や反応条件の下で簡便なスクリーニング系を整備した。加えて、感度検定やポジティブコントロールとして利用可能な検出プライマー配列を有する合成DNA配列を基にしたプラスミドを開発した。次いで、実際の臨床検体を用いて、検体採取キット、遺伝子抽出キットを用いた一連のスクリーニング系を評価した。ウイルス分離に用いる培養細胞には、当初は様々な培養細胞の利用を検討したが、アデノウイルスの分離効率が最も高いヒト肺線癌上皮細胞由来のA549細胞のみを用いた。また、本研究課題遂行のために、国立感染症研究所及び協力機関においての本研究課題を基にした調査研究の倫理審査を行い、承認された。構築したスクリーニング系を用いた既存検体からのアデノウイルス探索では、複数のアデノウイルス型を検出・同定した。
本年度では、当初の研究計画に従い、実際の臨床検体約200症例(尿検体)を目指し、検体を採集する。特に、非クラミジア性非淋菌性尿道炎や非クラミジア性子宮頸部炎患者に着目し、集中的にアデノウイルスの同定、分離を目指す。分離できたウイルスについての詳細な遺伝子解析やフルゲノム解析等を行い、既存の遺伝型と比較する。以上より、性感染症患者から分離・同定されたアデノウイルスの血清型や遺伝型について詳細に解析を行い、他の微生物との相関関係や性感染症全般における感染アデノウイルスの分子疫学的解析を行う。
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