新規選択的エストロゲン受容体モジュレーター(SERM)による新しい子宮筋腫治療の開発を目的として研究を遂行してきた。本研究ではラット子宮筋腫細胞株(ELT-3細胞)および、ヒト子宮筋腫モデルマウスを用いてSERMであるSS1020、SS5020を子宮筋腫治療薬として臨床応用するための研究を目的としている。 平成25年度で、MTS assayを用いた新規SERM(SS1020、SS5020)の細胞増殖抑制効果を検討した結果、SS5020のみで抑制効果が確認された。よって26年度は、SS5020のみを用いてin vivoの検討を行った。結果、SS5020(10.7mg/kg/day)は子宮筋腫に対し抑制効果がみられるものの、その効果はそれほど強いものではない可能性が示唆された。 平成26年度に行ったin vivo実験で使用したヒト子宮筋腫移植マウスモデルはエストロゲンを補充したモデルであり、移植組織が生着はするものの増大することはないモデルである。子宮筋腫の増大にはプロゲステロンが重要であることが知られている。よって、本年度はエストロゲンに加えプロゲステロンを加えた移植モデルマウスを作成し、それに対するSS5020の抑制効果を引き続き検討した。 全ての群において移植組織のサイズは増大するが、SS5020を10.7mg/kg/dayで投与した群では筋腫の増大を有意に減弱させた。移植片の病理組織学的検討では、SS5020の10.7mg/kg/day投与群で、細胞数を有意的に減少した。また、TUNEL染色では、SS5020投与群で陽性細胞数の有意な増加が確認された。しかし、Ki-67はSS5020投与群で有意な変化は確認できなかった。 以上より、SS5020はSERMとしての作用以外に、プロゲステロンシグナルにも作用することで、子宮筋腫増大抑制効果が期待できることが示唆された。
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