本研究は、超音波のエラストグラフィー機能を用いて、内診にかわる客観的な子宮頸管硬度評価を行うことで、切迫早産例の予後判定に有用な診断法となりうるかを検討するものである。 はじめに、本研究は院内倫理委員会に承認を得た。婦人科疾患で摘出された子宮を用い、子宮頸管の硬度を、硬度計とエラストグラフィーで評価した。結果、二つの測定法には相関関係があることを確認した。 次に、妊娠37週以降の妊婦95例を対象として、頸管長測定、エラストグラフィーと内診(ビショップスコア)の3つの指標を測定した。エラストグラフィーは、頸管腺部の内子宮側、中間部、外子宮口の3つの部分に分けて評価した。結果、陣痛発来予測において、10日以上の予測にはエラストグラフィーが、3日程度の予測には頸管長が優れていることが分かった。 この結果に基づいて、妊娠22週以降36週未満の切迫早産妊婦と対照群として同時期の切迫症状のない妊婦に対し、同様に頸管腺を3つの部分に分けて硬度を測定し症例の集積を行った。のべ700データを集積し、追跡不能やデータ欠損などを除き520データを解析に用いた。結果、入院を要した症例と対照群間で、硬度比(中間部/内子宮口)は有意に異なり、最適なカットオフ値は1.5で、オッヅ比は2.48(95%信頼区間: 1.28-4.79)であった。この成果は外来診療での早産リスクの評価に有用と考えられた。 これと並行して、直接的に子宮頸管硬度を測定できればエラストグラフィーによる硬度推定に勝ると考えられ、経腟的に使用可能とするべく硬度計の試作機を作成した。病院内倫理委員会に諮り承認を得て、妊娠37週以降の妊婦に対し使用した。のべ100例の測定を行い、機器の精度を評価した。級内相関係数による検者内誤差は0.650、検者間誤差は0.641であり、検査精度はまずまずであった。臨床応用に向けて、新技術導入による改良も検討しつつ試行を重ねている。
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