奇形腫患者の配偶子の質の形態学的評価およびRNA定量では、奇形腫再発群での正常卵巣の標本が、また奇形腫既往のある生殖補助医療を受けている女性の余剰卵が2年間では得られなかったため、今後の検討課題とする。 昨年度から今年度にかけて、奇形腫患者より摘出した標本は18症例30検体に達した。奇形腫候補遺伝子の網羅的解析として、まずCNV解析を行った。いずれも新鮮凍結標本が採取できたため、それらよりDNAを抽出後、イルミナ社のHumanOmniExpressExome-8アレイにてCNV解析を行った。奇形腫の染色体は①ほとんど全てがUniparental disomy(UPD)のもの、②UPDをみとめないもの、③いずれもみとめる混合型、の3タイプに分類された。奇形腫孤発群と若年で再発を繰り返す群(奇形腫再発群)では上記CNVタイプとの相関は認められなかった。また同一症例より得られた複数の奇形腫でもそれぞれタイプが異なることがあり、奇形腫にみられるほとんどのUPDは、奇形腫発生の過程である減数分裂時の異常の結果として生じることが示唆された。しかし奇形腫再発群1例と胚細胞腫瘍合併症例にコピー数の増加領域を、またUPDをみとめないものでも、同一症例より得られた複数の奇形腫間で共通するUPDをみとめる領域があった。またCNV以外に、メチル化・SNP・RNAの解析中である。以上より得られた候補遺伝子を、RNA安定化保存液および凍結中の検体よりmRNAを抽出し、発現量に差があるか検討する。さらに昨年度に一部の組織から消化法にて単離・培養した腫瘍細胞を用いて、候補遺伝子と細胞多能性の関係を評価中である。
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