研究課題
前年度までに、卵巣型LRH-1のプロモーター活性は、転写共役因子PGC-1α、転写因子SF-1およびSpファミリーが協調的に制御していることを明らかにした。卵巣顆粒膜細胞における転写因子LRH-1の転写制御機構の全容解明に向けて、卵巣特異的な遠位エンハンサー領域の同定を試みた。まず、卵巣型LRH-1の保存性を検討するために、ラット、マウス、ラビットの卵巣において発現しているLRH-1の転写開始点を決定した。その結果、全ての種においてヒトと同様に卵巣特異的な新規転写開始点が存在することが明らかとなり、卵巣型LRH-1は哺乳類に広く保存されていることが示唆された。そこで、イントロン領域において、哺乳類間で高度に保存されている領域を7箇所選別した(領域A-G:各々約1kb)。この遠位エンハンサー候補領域A-GとLRH-1の卵巣型プロモーターとをつなげ、KGN細胞においてレポーターアッセイを行った。その結果、プロモーター活性を顕著に増強する領域として領域D(約1.4 kb)を同定した。また、領域Dは核内受容体の転写共役因子PGC-1αに応答し、プロモーター活性を更に数倍増強した。ヒト黄体においては転写因子SF-1の発現が減衰することが報告されているが、LRH-1発現の維持がどのように制御されているか明らかではない。そこで、Spファミリーが欠失しているSL2細胞を用いてレポーターアッセイを行った。Spファミリーと卵巣型LRH-1を共発現させることにより、SF-1存在下と同等レベルにまで卵巣特異的LRH-1プロモーター活性の増強が認められた。このことから、ヒト黄体においては、LRH-1が自らの転写活性を正に制御するオートレギュレーションが働いていることが示唆された。
2: おおむね順調に進展している
本年度は、卵巣型LRH-1の遠位エンハンサー領域を同定し、PGC-1αへの応答性も明らかにした。また、黄体化に伴うLRH-1の発現レベルの維持において、LRH-1自身によるオートレギュレーションが重要であることを示した。卵巣特異的なLRH-1の発現制御機構の解明は、黄体化の分子レベルでの解明につながり、LRH-1を用いた幹細胞からステロイドホルモン産生細胞への分化誘導技術の開発に重要な知見を与える。このことから、現在までの達成度はおおむね順調に進展しているものと考えている。
エンハンサー領域においてPGC-1αと協調的に働く転写因子の同定を行う。また、プロモーター領域とエンハンサー領域におけるエピジェネティックな変化を、LRH-1が発現している臓器(卵巣、肝臓)と発現していない他の臓器で比較することにより、卵巣特異的なLRH-1の発現制御機構を明らかにする。組織から抽出したゲノムDNAをバイサルファイト処理し、ゲノムDNA上のメチル化の変化を捉える。ChIP法により、ヒストン修飾の変化を明らかにする。
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