研究課題
本研究では、転写因子steroidogenic factor-1 (SF-1)、liver receptor homolog-1 (LRH-1)およびCCAAT/enhancer-binding protein beta (C/EBPβ)を介した卵巣顆粒膜細胞分化メカニズムの解明を目的としている。これらの転写因子によって誘導される遺伝子は、黄体化など卵巣顆粒膜細胞の分化のための重要な因子である可能性が高い。ヒト卵巣顆粒膜細胞由来KGN細胞にアデノウィルスを用いてSF-1、LRH-1およびC/EBPβを導入し、発現変化する遺伝子群をマイクロアレイ法により網羅的に解析した。さらに、RT-PCRならびにWestern blottingにより解析することで、SF-1およびLRH-1により遺伝子発現が誘導される遺伝子としてhydroxysteroid (11-beta) dehydrogenase 2 (HSD11B2)を見出した。HSD11B2は哺乳類において、糖質コルチコイドの不活性化に関与する酵素として知られていた。一方で、卵巣においては、HSD11B2がSF-1およびLRH-1に誘導されることで、卵巣分化の際に何かしらの役割を持つと考えられる。ヒト組織を用いた発現解析の結果、ヒト卵巣においてHSD11B2の発現を認めた。そこで現在、卵巣におけるHSD11B2の機能について解析している。また前年度に引き続き、SF-1およびLRH-1に誘導される新規な新規標的遺伝子を探索中である。
2: おおむね順調に進展している
ヒト卵巣顆粒膜由来KGN細胞を用いた解析により、SF-1およびLRH-1により転写制御される標的遺伝子として、新たにHSD11B2を見出した。また、実際にヒト卵巣においてもHSD11B2が発現することを見出した。このことから、現在までの達成度は、(2)に該当すると考えている。
来年度は、卵巣におけるHSD11B2の機能解析を行うとともに、HSD11B2遺伝子プロモーターを用いたreporter assay等により、プロモーター上に存在する転写調節領域の同定を試みる。さらに前年度に引き続き、卵巣顆粒膜細胞の分化に重要な因子の探索および機能解析を試みる予定である。
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すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 4件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (11件) (うち招待講演 1件)
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